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□透明少年と将来設計
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「千尋さんは将来何になりたいんですか?」

「テツヤくん…、えっと、いきなりだね。随分と」

進路は考えなくちゃ、とは思っているけれど、そんなにビジョンがはっきり見えている訳ではない高校一年生。

真顔で尋ねてくる彼氏…である黒子に、千尋はたじろいだ。

「とりあえず、都内の文系の大学に行って、言葉について学びたいかなぁ…。図書館司書の資格が取れるところにはいくと思うけど…。何になりたい…、って言われたら…」

編集さん、かな。

どきゅーん。

(ここの表現がイマイチね、とか言っているキャリアウーマンな千尋さん、素敵です)

「千尋さんの本選びのセンスが抜群ですからね。その夢はとても素敵だと思います」

「ありがとう、テツヤくん。…テツヤくんは、なりたいものとかもう決まってるの?」

「ボクですか?」

うん、そうそう。と千尋がうなずくと、黒子はんー…、と思案顔になった。

「保父さん、でしょうか」

「!?」

どきゅーん。

(小さい子たちと戯れてるテツヤくん!?何それ、すごく素敵…!)

「テツヤくん、動物とか、小さいことか好きだもんね!素敵だなぁ…」

そうなるといいね!と千尋はにっこり笑った。

はい、なりたいです。と黒子も返した。

「では、千尋さんは、どんな家に住みたいですか?」

「?お家?うーん…。
お家は考えたことなかったなぁ…。
あ。一戸建てのお家、かな?わんちゃんとかねこちゃんとか飼うなら、広いお庭があると嬉しい!」

お散歩に行けなくても、お庭で遊んであげられると健康に良さそうだよね。

「あとは、書庫があるといいなぁ。テツヤくん、私の家着たら分かると思うけど…。気が付いたら本御殿になっちゃうので……」

むしろ、必須スペースなの。と拳を握る千尋。
度々話に上る奥村家の書庫は、黒子の興味をそそっていた。

「そうですね。ボクも書庫…書斎は必要だと思います」

「テツヤくん、そのほかに希望とかないの?」

「そうですね、子供部屋には十分な大きさを取って…。あと、寝室には大きなベッドを入れたいです。離れ離れに寝たくはないですね」

「ああ、寝室が別ですっていうところ、あるもんね!その点うちは、二人ともラブラブだなぁ…」

うん。本好きラブラブ夫婦、と笑う千尋。

黒子は、僕たちもそうなりますね、という言葉を飲み込んだ。

「あっ。あとは、みんなで立てるキッチンかな。週末とか、一緒にお料理するの」

「それは楽しそうですね」

あんまり毎日かまってあげられないかもしれないけど、一緒の時間は大切にしたいなぁ…。

と想像を巡らせる千尋に、黒子は彼女の髪を梳いて、その一房に口づけした。

「て、テツヤくん…?」

さまになるその動作に、ドキマギしてしまう千尋に、ふわり…と黒子は笑った。

「千尋さんが真面目に考えてくれたおかげで、ボクの方も何となく将来設計ができました」

「えっ、えっ?」

将来設計…?
その単語と、髪への口づけ…という行為に千尋は真っ赤になってビシッと固まった。

「ボクの希望は、千尋さんが隣にいて、時間がたったら、その間に子供がいて…夜に皆で笑いながらテレビを見たり、千尋さんと、子供が協力して作ってくれた料理をおいしいって言いながら食べたりすることです」

「…!?て、テツヤくん。あのっ…そういう話だったの!?」

わ、私ってばイフの話だと思って、すごく妄想広げちゃったんだけど…!と取り繕う千尋。

それでも、黒子がくれたインパクトは強すぎた。

少し歳を取った彼と、少し歳を取った自分と…。

ああ、子供はどちらに似るんだろうか?どちらにも似てほしい。

堰を切ったように出てくる未来に…。

期待と恥ずかしさに、千尋は頭を抱えた。

「平日は忙しいかもしれませんが、休日になったらいっぱいお出かけできればいいですね」

「ぅぁぁっ……//」

テツヤくんの笑顔がっ…!

心臓ヤバイ…っ!

「二人の夢をかなえるために、頑張ります」

「も、もうダメっ……それ以上は…」

「大好きです、千尋さん」

よしよし、と撫でられた頭から相当湯気が出ていたに違いない。

テツヤくんが頼りになりすぎて…、未来がすぐに想像できて…。

(……私、ちゃんと耐えられるんだろうか…っ!)

「て、テツヤくん…、かっこよすぎ………です」

ふらり……。机にダイブしてしまった千尋に、満足げな黒子だった。


☆透明少年と将来設計


(何で奥村ばててんだ?大丈夫か?)

(感性の針の値が振り切れてしまったみたいなので、しばらくそっとしておいてあげてください)

(……お、おう)

なんか、黒子がすげー幸せそうなのが気になる…!


 

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