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□とファッション雑誌
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「…、え。…あの…」
「へぇー、この子が黒子っちの彼女っスかー。普通の子っスね」
じろりじろりと、値踏みするような視線を浴びて、私はたじろいだ。逃げたい。
でも、その視線をくれている目の前の金髪の長身が、今持っているファッション雑誌の表紙でキメた笑顔を見せているのにも、驚いてちゃんとした声がでない。
手元と目の前を視線が行ったり来たりして、定まらないでいると、見慣れた水色の髪の彼が、彼の肩を引っ張った。
「あんまり近寄らないでくれますか、黄瀬君。奥村さんが理解できていないみたいなので」
「えー。桃っちに靡かなかった黒子っちが彼女作ったって風の噂で聞いて、すぐ会いに来たオレなんスよ!?扱い酷いっス!」
「ボクは呼んでいません。…そんなことで神奈川から来たんですか?」
「大ニュースなんで、キセキみんなにメール送ってからきたっスよ(`・ω・´)」
きりりと顔を引き締める彼に、黒子くんはため息をついた。
「余計なことをしましたね、この駄犬が」
(駄犬…!?確かに…ちょっとそうかもしれないけど…黒子くんからそんな言葉が出るなんて…!)
「あの…黒子くん…ごめんね。そちらの方は、モデルさんの黄瀬くん…ですよね?」
「はじめまして、黒子っちの彼女さん。
知ってるならそんなに紹介いらねっスね。モデルの黄瀬涼太っス。黒子っちとは同じ中学でバスケ部なんスよ」
「あ、バスケ部の…。なるほど。ご丁寧にどうも…。妹がファンです。私は黒子くんと隣の席の、…彼女、の奥村千尋です」
よろしくお願いします、と頭を下げると、それまでじぃぃ…と見つめていた黄瀬くんは、ニパッと笑った。
「イイコっスね。よろしく、千尋ちゃん」
そのモデルスマイルに、少し顔が火照った。
(ミーハーじゃ、ないんだけど…)
モデルオーラってこういうこと言うんだー、へぇぇ…。と感動しきりである。
思春期真っ盛りの妹がアイドルではなくてモデルにきゃーきゃー言っているのを見ていたが、このルックスではきゃーっと言いたくなるのも、分からない訳じゃない。
「奥村さん、驚かせてすみません。黄瀬君が会いに来るとしつこかったので暇な時間を連絡したら…奥村さんを見に来るためだとは」
呆れました、と黄瀬くんを睨みつける黒子くんは、見たことがなかった。
(…砕けた雰囲気の黒子くんだ//)
でも。千尋にとっては、目の前のモデルさんより、目の前の彼氏さんの方がキラキラとして見える。
(何とでも言ってください、わかってます。の、ノロケです…)
いつもの、火神くんや、私に見せてる顔じゃないなぁ、と見ていると新鮮だった。
「ううん。気にしないで、黒子くん。なんか…目の保養です」
主に黒子くんが…。わー、笑った顔とか、真剣な顔とかは見たことあるけど、呆れた顔は初めて。
「可愛いっスね、千尋ちゃん」
「黄瀬君、目潰しますよ」
ぐっと手を構えた黒子くんに、黄瀬君は大慌てだった。
「黒子っち怖っ!見たっていーじゃないっスか」
「よくないです」
減ります、と私を背中に庇う黒子くんに…ドキドキした。
私の背は黒子くんより結構小さいのですっぽり隠れてしまう。
「じゃあ、写真とろうっス」
「慎んで遠慮します。見るのダメって言ったのに、君の耳は付いてるだけなんですか」
なんかどんどんヒートアップして、止まりそうにないんだけど…!
「あ、あのっ!黒子くん、黄瀬くんと久しぶりに会うんだよね?立ち話もなんだし、私、何か飲み物買ってくるよ」
何かリクエストある?と聞くと、振り向いて、きょとん、とした二人はやや渋ってから、黄瀬くんはミネラルウォーターで、黒子くんはスポーツドリンク、と返してくれた。
「すみません、奥村さん。よろしくお願いします」
「はい、任されました」
少しだけおどけて言うと、気をつけて下さいね、と返された。
鞄を持って、近くのコンビニにさぁいこう!
(なんだか耐えられないからねっ!急いでゆっくり買ってきます…)
あれ、なんか言ってること矛盾してるかも…?
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