マリオネットとワルツを
□作品番号Op.9
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潮のにおい…、鉄の錆びたにおい…
誰かの…吐息………
「う“…。……っつ!!」
(な…棗っっ!?)
驚いた蜜柑の肘がパーマの後頭部にあたり、パーマが目を覚ました。
「くるくるパーマ…っ!」
蜜柑は必死に状況を理解しようとしていた。
(ここ、どこ…倉庫っぽいけど…)
「おい、ガキ目覚ましたか?」
(今の…レオの声…っ)
「……まだです」
とっさに寝たフリをした二人。
(そうやあの時…ウチらもレオに誘拐されたんや…)
「あ、組織の方と連絡とったんですが…」
「なんて?」
「本日の玲生さんの行動について思慮に欠けるとほかの幹部の方々、お怒りの様子で…」
「…だから言ったでしょう玲生さん。あくまで俺達は学園の内情を探るだけの使命しか…」
「何が「思慮に欠ける」だよ。こんな千載一遇のチャンス、あいつらだって同じ立場にいたら絶対そうしてたくせに」
(何この会話……)
「…彼は何て?」
「連絡時にはご不在だったので…」
「なーんだ、つまんないの。「黒ネコ」を手に入れたってきいたらあの人どんな顔するだろうって楽しみだったのに。ま、余計なオマケ2匹もついたけどさ」
「玲生さんの顔は世界的に売れてるんですからそんな事で足がついてすべて台なしになる事を組織は危惧してると。もう少し全体を見て行動を」
「あ――ハイハイ」
(組織って…)
「大体あんな芸能活動、彼の命令でなかったらいつやめたって構わないんだ」
「玲生さんは本当にボスがお好きなんですねえ…」
髪を弄る玲生の肩を揉んだ部下は裏拳をかまされた。
「密輸船は?」
「今夜2時、それまで学園側にみつからないようここで待機との命令です」
(密輸船…っ)
「日向棗は組織送りとして、残りおまけ2人は売っぱらう前に何のアリスを持ってるか確かめる必要が。まだ子供なので組織のデータにも入ってません」
「薬きれた頃ききだしとけ」「ハイ」
ザ…玲生が3人の近くまでやってきた。びくり、と蜜柑とパーマの肩が跳ねた。
「……こいつがあの「黒ネコ」ねえ…」
寝たふりを確かめられるのかと思いきや、怜生は棗を足蹴にした。
(な…棗君を足蹴に…っ)
ショックを受けたスミレだった。
「あの…何なんですか?その『黒ネコ』って」
「『黒ネコ』ってのはこいつの裏世界での通称。こいつはアリス学園の影の産物、闇の工作員さ。『弱冠10歳で異例の幹部生』『発火能力で絶大な潜在能力を持った天才アリス』こいつが何で組織のブラックリストに載ってるのか知ってるか?
2年前、わずか8歳の時、こいつは自分の住んでた町全域を一夜にして火の海にしたんだ。世間的にはただの放火として事件は迷宮入りで片付けられたけどね」
(うそ…)
「そこで国が鑑別所がわりにこいつを放り込んだのがアリス学園で。学園は更正と称してこいつを着々と裏の仕事を片付ける『工作員』に仕立て上げた。こいつに痛い目にあわされた国や企業・団体は多分両手じゃ足りない。うちの組織もな。俺が知ってるのはそんなとこ」
「目の色変えるハズですね、そりゃ…」
「勿論工作員はこいつだけじゃない。ただ、こいつは異例だ。仕事をするとき、一度も黒ネコ面をはずさないことから畏怖を込めて『黒ネコ』と呼ばれたらしいけど。
学園が表向き「危険能力」なんて銘打ってるあのクラス、実体は目をつけたガキを裏工作員に育てる工作員養成セクションだよ」
『人殺し』
玲生が言った言葉に起きていた2人は汗をかき続けていた。
「…棗君…はそんなことしないわよ。工作員とか放火とか、あんなの…でたらめに決まってるわ。棗君はそんな事する人じゃないわよ……っ」
「……でよう」
「え」
「とにかく…ここからでることを考えよう」
「な…どうやって」
「わ…分からんけどっ、今夜2時に密輸船くるゆうてたし、そしたら棗もウチらもっとやばい事になるよ。あと何時間あるか分からんけど…二人をここまで追ってきたウチらなんやからきっとできる。死ぬ気で考えねん。ここからの脱出方法」