マリオネットとワルツを
□作品番号Op.16
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回想→
『孜君はどっちの班に入るんー!?』
『断然ケーキよね』
きらきらきら、とまた特有の瞳の輝きでグリグラ班に入れようとする蜜柑と蛍、に。
ポンチョを編んでいた(高速で)孜は手を止めた。
『んー…俺はねー…、やんなきゃいけないことがあるんだよねー。しかも徹夜で』
『え?どういうこと?』
うちらが手伝うんは放課後やろ?と聞いてくる蜜柑に、孜は笑って濁した。
『分類的には、飾り付け班なんだけどねー…』
『ケーキ班には来ないってこと?』
つまりそうなの?と聞く蛍ちゃん。
『そういうこと。だからごめんね。ケーキ作り頑張ってよ、おいしいケーキ待ってるから(にっこり)』
『…う、うん…//(その笑顔は反則や)』
『わかったわ…(絶対、手先の器用な孜君ならおいしいケーキが作れると思って楽しみにしてたのに)』
ぽっと顔を赤らめる蜜柑ちゃんと明らかにがっかりする蛍ちゃんが大体何を考えているのか思い浮かべながら。
『(ま、ケーキあんまり好きじゃないんだけどね、ゴテゴテしてて。自然な甘みの和スイーツとかしか食べないんだよー)ごめんね』
孜は大人の意地悪さを発揮していた。
回想終わり。
「ってことで、どこ行ってるのか…」
ゴツンッッ…
「ちょっ…、大丈夫かな、ここにぶつけないでって注意されなかったー?」
「ワリーワリー、手が滑ったー!!」
大きな音に気をとられ、目をやった先はクリスマスツリーの…。
「あれ、翼先輩、木の中に家があるん…?」
「あー、あれ毎年あるけど何で立ってるかわかんねー奴な」
家だった。
ガチャ…。
その翼先輩曰く何で立ってるかわかんねー奴のドアらしきものが開いた!
「……誰ですか…、家に資材をぶつけた人……」
「「「ああああっ!?!?!孜(君、炬口)!?!?」」」
どよん…、といつものハキハキした感じはどこへやら、何のためにたっているか分からないツリーの中の家から出てきたのは、噂をすればなんとやら…、孜だった。
「気をつけてくださいね……、じゃないと皆怪我しちゃうので……」
「は、はいっっ!」
くっきりついた目の下のくまを見たテレキネシスの中等部生は一気に真顔になって、ワタワタと逃げた。それだけ孜はやられていた。
「孜くーんっっ!!おーーいっっ!!そこで何してるんーっっ!!」
やれやれ、とまた家の中に引きこもろうとした孜の背中に、聞きなれた関西弁が投げられた。
「蜜柑ちゃん、あ、翼先輩も。どうもどうも、そっか。もうケーキ班が始動している時間かぁ」
遠い目をしてふふっ、と笑う孜…不気味。
「孜―、大丈夫かー。ていうか、そこ飾りじゃなくて家なんだな…」
「大丈夫でーす…(多分)。そうですよー、知らなかったんですか?この家は、木の家なんですよー。この巨木の」
「「?」」
孜の言っている意味が分からず、ケーキ班がそれぞれ首を傾げる。その様子を見た孜はくすっ、と笑ってから切りかえした。
「この木、どうやって中に入れてると思いますー?」
「そりゃ、テレポートとかなんじゃねぇの?」
長くこの木を見てきた翼先輩が言ったのなら、大体みんなそう考えているということなんだろう。孜はそれが分って、またくすっと笑った。
「それがですねー、聞いて驚け、昨日一晩で、種からこの樹齢になるまで成長させるんですよー。植物系のアリスの人たち総動員で」
「マジでっ!?」
予想外すぎる答えに、翼先輩や美咲先輩、委員長は目を見開いた。
「岬先生はケーキ係に抜擢されたからいいもんですけど、他の人たち今爆睡してますよー」
それだけ疲れるんですよねー。
「でも、お前のアリスは違うだろーが」
「あ、棗―。なっつーん、今日もカッコいー!さすがー輝いてるー」
ケーキ班と一緒になっていた棗が鋭い突っ込みをするので、適当に流したつもり…。だったんだけど。
「はぐらかすなよ、それで?」
っとまぁ、翼先輩に言われて。他の子たちもキラキラっ!と…話しの続きを聞きたそうにしているもんで…。
(眠いから、あんまり…長話したくないんだけど…)と心持は思っていても、孜は言葉を重ねた。
「寝かせるんです。成長させるために、色々ムリかけたんで、この巨木はどんどん成長するんですよ。だから、この木を『寝かせる』んです。もー、子守で大変。おかげで俺眠れやしない」
「じゃあ、さっき怪我するぞ、って言ってたのは…」
ぞくっ…。
「ここに、木の中心部みたいなのがあるんで、それを寝かせてるんです。騒ぐのはまあいいんですけど、ぶつかったりされたら起きちゃうんで、また成長しますよ」
「すっごー、孜君、すごいなーっっ!!」
なんかよくわからんけど、と付け足された言葉は無視しても。
「ありがとう、蜜柑ちゃん(なんかその反応だけで報われる…)」
「それで孜はいつまで付きっ切りなんだ?」
まさか明日もってわけじゃないよな、と翼先輩もやさしいよぉ…(ほろり)。
「明日の本番にはもう深く眠ってくれると思うんで、パーティーには出れるけど、そっちの準備を手伝うのは難しいかな」
「そっかぁ…」
わかってても、一緒に準備したかったなぁ…んんて可愛いことを言ってくれる蜜柑ちゃん。
「明日、楽しもう?俺と踊ってね、蜜柑ちゃん。今から予約v」
「うんっ!ウチも準備頑張るっ!!」
「「……(天然タラシ……)」」
翼と棗は眠くて半分意識のない孜が透に戻りかけていて、女の子大好き!可愛い子大好き!もう撫でくり回したい!というモードを知らない…。
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