願いを流れ星に込めて

□星十一夜
1ページ/4ページ





ペルソナに連れられて訪れた場所は何年間も放置されているだろうコンテナが山積みにされた場所だった。いつものようにアイマスクをさせられて学園を出て、何時間車の中に揺られたか分からない。任務の前は始終静かで、ペルソナの声だけが任務の内容を教える為に開かれていた。

「任務は明後日の1時、反学園組織と密売人とのアリスの人身売買を止めること。こちらに入った情報では、組織の人数は10人に満たない。攫われたアリスは1人だ。組織はその時間にしか現れず、人質も然り。今、その取引の現場に向かっているが、今日は車の中で寝なさい。アリス1人では幹部クラスは現れないだろうが全員何かしらのアリスに間違いない。分かっているね、千悠。約束するんだ千悠…もしお前が敵に捕らわれた場合、そこから逃れる術をすべて断たれたならばその時は…自らの命を断て。もしお前がその力を敵に引き渡し、学園の脅威となる事を選んだら、お前の大事な者達がどうなるか分かってるね…」

「……分かってる…それに、私がそんな下っ端に傷つけられると思う?」

黒塗りのベンツの中でペルソナの隣に座っていた千悠はくすくす笑った。同じベネツィアンマスクの下でどんな瞳をしているか分からないけど、口紅が塗られて真っ赤になった千悠の薄い唇は細い月のような弧を描いていた。

「ねぇ…ペルソナ。人身売買を止めることは分かったけれどその人質は救出?それとも削除?」

くるくる巻かれた千悠の髪は黒々していて艶やか。それが真っ白なマスクと対比されて鮮やかに写った。

「削除だ。こいつは過去にアリスを使って重犯罪をいくつもしている。それが今回、こいつが海外に売られる事になった要因だ」

「それって罪逃れのため?」

重犯罪をするようなアリスなら、少なくともルカやナルのような体質系じゃない。潜在能力や技術、特力じゃないと攻撃は難しい。

「それもある。だが…こいつは組織の勧誘を何度か断っている。それで捕まった時に売り飛ばされる道になったのだろうと我々は予測している」

「ふーん…そう」

我々、の中に初等部校長も含まれていると考えると吐き気がする。別に産気ついた訳じゃないわよ。

「なら、全滅させていいんだ。面倒じゃなくていいな」

千悠はひらひらとその手を振った。かつてその右の指にはまっていた指輪のカケラがペルソナのポケットに入っていた。

『それ以上私たちに近づくな!』

『棗は行って』

(……千悠のアリスは『大気のアリス』その名の通り、大気を操る。空気圧を変えて重力を変え押しつぶしたり、真空を作って自然形のアリスの発動を阻止したり、酸素濃度を下げて相手を捕らえたりして任務をこなしてきた。だがあれは…)

あの時、自分の足は動かずに、棗は必死に逃げた。しかし、その顔は驚愕に満ちていた。

(第2のアリス…というのも捨てきれないな)

裏が取れない限り、校長に報告出来ない。

「……」

「………」

ペルソナがそれ以上話す見込みがなかったから千悠は眠ることにした。

(…同じように仮面をしているから…声だけしかわからないし…)




_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ