願いを流れ星に込めて

□最終夜
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『早く!』『血液パックはまだなのか!』『先生!こちらの子のアリスの反応がどんどんなくなっていきます!』
『まずはこっちの女性の止血と縫合!やけども激しい!』『みんな急ぐんだ!』『はい!』『寝ている奴らもたたき起こせ!癒し手が足りない!』
『女の子の意識レベルが急激に下がっています!』『指示を下さい!もちませんっ!』『外傷がある程度治ったらアリス回復をするんだ!』
『他の子供たちは!!』『外です!皆さん軽症です!一部だけ今井君に見てもらっています』『そっちが終わったら至急こちらに来るように言ってくれ!』
『頑張れよ〜!死ぬんじゃない!』『女性の止血完了しました!』『気を抜くな!引き続き油断ならん状況だからな!』『はい!』

千悠の決死のテレポートで学園の初等部寮の棗の部屋に舞い戻った一行。
喜ぶ間もなく…先に戻るのをまっていた櫻野と今井兄が星海の姿と、千悠の姿を見て、

「本部へ!皆隣の人と手を繋いで!テレポートする」

秀一の掛け声で本部の医療棟に担ぎ込まれた。
昴が顔パスで手術室を空けて緊急事態を告げ、すぐにオペが始まった。
深刻なのは…爆発をもろに受けた星海。
そして、星海が一ヶ月治療して、小康状態まで持ち直させたにもかかわらず、長距離の無理なテレポートによって再びアリスを使ってしまった千悠だった。
大きく開いた窓から中を心配そうに見つめる面々は、煤けた顔をしていたが昴のアリスによって傷はほぼ完治していた。
最後まで千悠救出に奔走した棗とルカを除いて。

「………」

昴のアリスだけが物言わぬ圧力を持っていて傍らの秀一、殿、翼は棗とルカを囲んで押し黙っていた。

「…俺らはいいから早く向こう行けよ」

「そうです…千悠と星海さんを…治療してください」

が、さっきからこの一点張りである。

「だーっ!お前らはしっかり治療受けろ!」

ごつん
翼の鉄槌が下る。

「そうそう。お前らの気持ちもわかるけどな〜…千悠ちゃんと星海さんの気持ちも考えろ」

殿の口調からは…ロリコンと子持ちのお母さんもオッケーなのかよ。と突っ込みを入れたくなり。プリンシパルの2人は口に出さなくてもわかるだろう?というオーラで。
棗も、ルカも歯噛みした。

「今は…二人とも…自分たちに任せるしかねぇだろ…」

「そうだな…」

「僕たちができることを強いてあげるなら…ねぇ、今井」

「…願う、ことだけだろ」

願いのアリスは2人のものだけれど、星に願うことは誰にでもできることだから。

(…千悠…星海さん…)

(早く…無事に回復して笑顔を見せろ…)

星に、願いを込めて。


き・ら・き・ら・ひ・か・る〜♪お・そ・ら・の・ほ・し・よ〜♪

「千悠!?」

「千悠の声だ…」

バッと手術室のほうを見るが、千悠が起き上がった様子もなく、依然としてあわただしい。

「どういうことだ?」

「わからねぇよ」

棗、ルカだけでなく、殿にも翼にも千悠の声は聞こえているらしく、手術室の前に張り付いていた初等部B組のメンバーも食い入るように千悠を見つめている。

「星海さん…も…」

「星海さんも歌ってる…」

秀一と昴が静かに言う。

『お母さん、死なないで。どうか、生きて、私といっぱいお話しよう?学園にいれば大丈夫だよ。お母さんの傷はすぐに治るよ』

『千悠のアリスを失わせてはいけない。ゆっくり体を休めて、できるだけ使わないように心がけて。私のアリスを分けてもいいから…あなたには、未来があるの』

『お母さんの傷が治らないことがないように、私、お願いするね。私のお母さんはここにいるの。私のお母さんなんだよ?ずっとずっと捜してた、ずっと望んでた、私の家族なの…だから、お願い。お母さんを、治してください』

『あなたの家は、アリス学園なの。どんなに嫌でも、あなたが育ったここが、あなたの家。あなたのあるべき場所。…お願い、千悠からアリスを奪わないでください。アリスがないと…娘は、なんの導きもなく、生きていけるほど強くないのです』

歌にこめられた、2人の願い。その願いに、流れ星が1つだけ落ちた。



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