願いを流れ星に込めて

□星三十七夜
2ページ/8ページ




「はぁい♡おはようございまぁす!今日は皆さんに新しいクラスメイトを二人紹介したいと思います。じゃあ、棗くんのほうからよろしくね♡」

キャアアアアアアァッ!
髪の両端を軽くパーマした女子が俺たちを見て叫ぶ。うぜぇ。

ガンッ

その意を込めて、隣のナルというカマ教師を蹴飛ばす。…と、顔に怒りマークを浮かべながらみんな黙ってね。だとよ。…大人しくなったから、いいか。

「……日向棗。アリスは火」

以上だが?
何か文句でもあるなら言ってみろ。そういう風に睨みつけると、それ以上を聞きたがっているクラスの奴ら(さっきの女子とかな)はざわめいたが黙った。

「乃木流架。動物フェロモンのアリス」

だからルカの自己紹介もすんなり終わる。

「はーい。皆さん仲良くしてあげてね!っと…二人は昨日学園に着たばかりで右も左も分かりません。誰かパートナーになってお世話してくれる子は居ないかな?」

「は?いらねぇよ」

そんなウザイ奴。思い切り棗が眉をしかめると、ルカも、俺も要らない。という。

「そうはいっても、早くみんなになじむためには必要だと思うんだよね♡誰か立候補は居るかな?」

はい、はい、はい!
さっきの女子が我先に、と手を上げるが、ナルが華麗にスルー。いい性格してやがる。

ガチャ…

またざわめき始めたところに、開いた扉。
それを聞いて、俺がナルを蹴ったとき以上にクラス内が静まり返った。

「……」

黒くて、ウェーブのかかった髪が肩まで伸び、分けた前髪からは整った顔立ち。

「おはようございます!千悠様!!♡」

「……おはよう、スミレ」

「おはよう、千悠ちゃん♡ちょっと遅刻だぞ♡」

「……」

あらん。無視されたナルは少し残念そうな顔をしてから、座席のほうに向かう千悠の肩を叩いた。

「(びくっ!)…ナル」

「千悠ちゃん、遅刻のペナルティーね。…ここに居る、転入生の日向棗君と乃木流架のパートナーをやってくれない?♡」

にこやかに。ナルが言う。女は…心底いやな表情で。

「ええー!千悠様が!?でも、それならぁ、スミレ納得〜」

おい、誰かあの空気を読まない女を黙らせろ。

「…断るわ。それに、遅刻に関しては言うまでもない理由だと理解していると思ったのだけど」

いうまでもない理由?

「まぁね。でも、遅刻は遅刻でしょう?」

それに。とナルは女に耳打ちをする。

「(黒髪の彼…日向棗君は、君と同じ危険能力系で星階級もスペシャルに決定しているんだ。君の嫌いな彼がとりつくのを黙ってみているほど、君は仲間に非情じゃないと思うんだけど)」

何の話をしているのかはわからないが、女とナルはほかに聞こえないようにひそひそと話している。

「……ふぅ……」

私、結構ナルもキライかも。そういうと、お褒めに預かり光栄です♡とナルは言った。
ナルと話していた女が振り返り、俺たちと女の目が合う。

「お前の名前は?」

…その瞳に惹かれて、俺が先に口を出すと、驚いたような表情でルカが女を見た。

「人のことを聞く前にまず自分たちのことを言いなさい、常識よ」

「あ…俺は、乃木流架。動物フェロモンのアリス、です」

「……日向棗だ。火のアリスだ」

そう。その言葉は、あっそう。ちゃんと名前あるんじゃないの。といった感じだった。

「私は東海林千悠。大気のアリス。星階級は初等部で唯一のスペシャル。つまり、プリンシパルで基本的に忙しいの。悪いけどあんた達に手取り足取りこの学園について教えてる暇なんてないから、勝手についてきて勝手に覚えて。それがいやなら、学級委員の飛田君」

「はい!」

話を振られたイインチョが漫画汗をかきながらその場に立つ。

「彼は優しいから何でも教えてくれるはず。それにスミレ」

「はい!千悠様!♡」

さっきの空気を読めない女がハートを散らしながらその場に立つ。

「彼女も彼についで学園生活歴が長いからわからないことがあれば頼ればいい」

「千悠様と〜棗君とルカ君のお役に立つなら♡」

腰に手を当ててやれやれ、というポーズをとる千悠はとても俺たちと同年代とは思えないほど大人びていた。

「ナル、彼らの席は?」

「千悠ちゃんが独占していた机に座ってもらおうと思うんだけど?」

他にあいているところもないしね♡
ウフ、とナルが気持ち悪い笑顔で言う。千悠は引き気味だったが、鞄をしょったまま誰も座っていなかったクラスの一番後ろのど真ん中に陣取った。目配せで、隣に座れば?と言うので俺とルカは大人しく従った。

「籠の中にようこそ、日向棗クン、乃木流架クン」

ナルのホームルームが終わると千悠は制御アクセサリーが光る手を出して口角だけを上げたのだった。


_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ