願いを流れ星に込めて

□星三十七夜
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俺たちと千悠の出会い、…というべきか?まあいい。出会いは俺たちが学園に行ったあの日…必ず、戻ってくると誓ったあの日に遡る。

「さぁ、棗君、ルカ君、ここがアリス学園だよ〜♡」

カマ教師がドアを開けてにこやかに笑う。…うぜぇ。

「……」

「……」

俺とルカは目を合わせて、こいつには関わらないようにしよう、と決断した。というか、それ以上カマ口調で寄ってきたら燃やす。

「まずは手続きをしないとね〜♡今、君たちの目の前に見えてる建物がアリス学園本部。君たちの通う初等部及び初等部寮に案内するのはもう少し待っててね♡」

さあ、中に入って入って!カマ教師に案内されて、そして2人で待っているように♡と言われた部屋には、最低限の家具と、チッ…監視カメラかよ。

「棗…」

「ルカ」

俺の動きを先に読んだルカが、ここじゃ駄目だよ。と目線で語る。まだ右も左も分からない、ここで。動きをするのには早すぎる。…本部、といったか。ここに機能集中しているのは確かだろうが…。易々と敗れるほど、やわな守りではないだろう。

「大人しく待ってよ?」

「ああ。…あのカマ野郎を待つのは癪だけどな」

「……」

ウォンウォンウォンウォン

「?」「?」

「これって…サイレン?」

「火災か?」

『侵入者だ!!繰り返す、侵入者だ!!』『南西ブロックから入ったらしい!』『至急応援頼む!侵入者の姿は分からん!』

思わず身を硬くする2人。廊下から叫び聞こえるのは、侵入者の文字。

早朝に…あの町を出て、車で飛ばしてここまでやってきて、今はもう日が暮れている。アリス学園という組織の一端をわずか数十分で棗とルカは見せ付けられる。

『侵入者発見!現在初等部寮方面へ。武器を所持している模様』『侵入者の人数は20名弱。爆発物により塀の一部を壊して侵入したと思われます』

緊急の連絡が、本部中に駆け抜ける片端から、棗とルカの耳に入る。窓辺に駆け寄ると、どこぞの怪盗よろしく、大きなスポットライトを当てられて、その20人の姿がはっきりと見える。

「ど、どうするんだろう…」

「……心配するな…」

棗の顔を見上げるルカに、頼りない言葉を、見栄を張って吐く。

ガチャッ…
ノックもなしにいきなり開いた扉を振り返る。カマ教師が焦った表情をして部屋に入ってきた。

「棗くん、ルカくん!」

見るなり、よかった。と安堵の表情。

「どうなってるんですか」

「…たまに、こういう輩が居るんだよ。でも、大丈夫」

「どうしてそう言い切れるんだよ?」

…見て。カマが指差した先。…あれは…?

「……『殺戮女神』の御出撃だよ…」

殺戮女神?
物騒な名前とは裏腹に…。あれは、初等部の…女子の制服。

「迅速で確実な方法をとったか」

防衛部に任せればいいのに。と、カマが呟く。
俺たちは、何も分からずに…スポットライトを浴びた『殺戮女神』が何かのアリスを使い、簡単に侵入者を倒していくのを黙ってみているしかなかった。
何もかもが収束して、けたたましいサイレンが鳴り終わって、カマはもう少しだけ待ってて欲しいんだ。そう言い残して去っていった。

「棗…あの子…」

「俺たちと同じ初等部生だろ」

脳裏に焼きついた戦う姿。ルカのアリスとも俺のアリスとも使い方が異なる…戦いなれた姿があった。

「……大丈夫かな……」

「あの様子じゃ無事だろ…」

しらねぇけど。
俺たちと千悠のファーストコンタクトだった。



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