願いを流れ星に込めて

□星三十六夜
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「どういうことだよ、俺のせいって」

鍵穴から戻ってきた、学園の音楽室の前。
階段に座り込んだ棗だが、動けない体はそのままでも、瞳だけは炎のように燃え上がっている。その先には翼。
秀一も昴も殿もいるのにもかかわらず、真っ先に口火を切ったのは棗だった。ルカも、蜜柑もまだ…起きていない。

「ちょっと待てよ…、棗…」

ちらり、と翼が見上げたのは治療をしてくれている昴である。

「……俺達は別にかまわない。……東海林千悠が、居なくなったというならおおよその見当もついている」

「ああ」

頷くプリンシパル2人に対して…何も知らされていないのは殿一人。

「えっ、ちょっ…翼くん!?俺には!?」

心配するだろ、普通。こいつらと違ってまだ千悠ちゃんが居なくなった理由も納得してないんですけどーっ!!
がーんっ、という顔をした殿はとりあえず膝に乗っけていた蜜柑を抱きしめた。

「千悠が居なくなったのは…アリスのオーバーワーク。そして…彼女を連れ去ったのは…星海さんだろう?」

直感のアリスを持つ秀一が、こともなげに話す。

「…星海さんは…元気そうだったか?」

「…あの人と知り合いなんですか?千悠のお母さんと?」

翼が驚く。

「僕たちの先輩だった。……彼女もまた、殿内が知っているようなうわさを立てられていたよ」

「……」

なるほど、そういうことか…。と殿は段々察し始めている。

「おいカゲ、俺は千悠の母親の話をしているんじゃねぇよ。つーか、元気そうだったろ。無表情だったけど千悠に会って嬉しそうだったろ」

さっさと、「俺のせい」の話をしろ。と急かす棗。

「…おまえなぁ…物事には順序があるんだっつーの…」

まあ、いいけどよ…。
いいっすよね?と伺えば、棗の投げやりな言葉で納得した2人はどうぞ、と頷く。

「千悠がアリスのオーバーワークで倒れたことは分かるよな」

「……」

「アジトに入ってから千悠は、あいつらと戦ってアリスを消耗した。…多分、戦いだけだったら千悠は一緒に帰ってきてる」

翼が…そこで言いよどんだ。視線を泳がせて、ここから先を言っていいのかと。

「良いから言え!千悠の母親が…わざわざ俺のせいでもあるって言ったんだ。千悠がアリスを使ったらヤベェ状態なのは知ってた。それでもアイツは倒れたことはあっても、あんな状態になることはなかった!」

棗が吼えて、翼をつかみかかる。

「……棗、お前…」

やっぱり、お前は…あのときの俺と同じだよ。

「体は…大丈夫か…?」

ひどく悲しんだ目をしながら、翼は棗に問いかけたのだった。

「…どういうことだ…?」

その様子に棗はつかみかかる手を緩める。今、確かに今井兄に治療してもらっているのは棗であるが…、そういう話ではないことぐらい察しはできる。

「山の中で泊まっただろ。あの時、お前…蜜柑とルカぴょんが寝た後、千悠と俺が話をしてたときに…吐血して倒れたんだ」

「!?」

そんな記憶はない。

「お前…要と同じなんだろ…。4つめなんだろ…?」

アリスを際限なく使える代わりに…命を削るアリス。

「……」

棗は黙ったまま。
翼は…それを肯定ととり、静かに話し始めた。


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