願いを流れ星に込めて

□星三十五夜
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「よぉーっし!がんばりましょーっ!」

「元気だな〜…」

さあ、タイムリミットは今日までなんですよ皆さん!張り切ってZの足がかりを見つけて委員長のアリスを取り返し蛍ちゃんの特効薬を手に入れましょう!おーっ!
翼先輩はしみじみ言ってるけれど…。

(そうでもしないと少し気まずいんだよっ!)

昨日ぶっちゃけて赤裸々にあることないこと噂のこと語ってしまった翼先輩とか、切羽詰まった状態とはいえ『願いのアリス』を使ってしまった(今日見る限り状態はよさそうである)棗とかが特に気まずく、昨日は星空に化かされてしまった気がしてならないのである。

「集中して雑念を取っ払うのよ」

泣いても笑っても、今日しかないんだから。
呟くように、噛みしめて。
千悠は先頭に立ち、隠れて『願いのアリス』を使いながら山を分けていった。

「なかなか見つかんねーな…」

「んー…」

……ハ、ア…
かれこれ捜し続けて何時間。
ルカ経由で動物さんたちが穴のありかをを教えてくれてるけれどZが使った穴が見つからない。

(きっつい…な…)

ただでさえ、頭痛が酷い。昨日の棗への移譲は体に相当な負担をかけていて、じっと立っていれば頭がくらくらとゆれていただろう。
千悠の呼吸は他の誰よりも上がっていた。

「〜〜…」

ぐいっ
がしっ

「!!何す…」

よいしょっと…って。

「あーもうっ!見てられっかよ」

「翼先輩っ?!ちょっ…離し」

「うっせー」

振り落とされたくなかったら黙って抱えられてろ、といわれましても!
見てよ!あの棗のいやそうな顔!ルカと蜜柑の呆れたような顔ぉぉっ!

「だからってお姫様抱っこなんてありえないから!ヤダヤダ!はなせぇっっっ」

視線が痛いんだ!とボコすか翼を殴る。

「いてっ!俺だっていてーっての!アリスは使うなよっ!使ったらあの事全部ばらすかんなっっ!」

「んなっ!」

(…むかっ…)

千悠、ただでさえふらふらなのにこれ以上弱らせてたまるかよ!
と翼先輩が言っていることは正論で反論しようもないけれど。姫抱っこはいやだ!せめておんぶにしてくれっ!ということで。

「「「……」」」

何時のまにあの2人は仲良くなったんだろう、という疑問の目で見られつつ、千悠は翼の背中に収まったのだった。

「あ!ここ火薬の匂いするって」

「えっ?どこ?」

「この穴…っ」

千悠は翼先輩から降りてルカの近くに寄った。

「岩肌じゃん…」

「隙間から…かすかににおいがするわね…」

あたりっぽいわ。
と千悠が棗にどうする?と話しかける前に…。

ドッ

「わー!棗っっ」

棗様の足がでましたとさ。
それから芋づる式でずるずるとみな連なってワープした。



「おや、招かれざる客のご登場ですね」

「……御原幹部」

「メドゥーサでいいですよ。影であなた方がいつも呼んでるように。今回はあなた方の単独行動のせいでこの山に学園の追っ手を紛れ込ませたとか。まったく次から次へと厄介事を増やしてくださる方々だ」

「……」

「ああ、石森君を治療室の方に。ところで君は仮にもかくまってもらう恩人に対していつまでサングラスをつけたままでいるんですか?」

「…失礼しました」

「ところでどうですか。君の泥棒稼業の成果の方は。安積柚香君」

「……」

社交辞令、とでも言いたげなそのセリフには目を伏せて黙っていた。

「そうそう。今日は本来なら招いてもきてくださらない方が…ここに居ましてねぇ」

「…?」

「今は温泉を楽しんでいらっしゃる、が、戻ってきたら挨拶はしておいたほうが懸命だと思いますよ」

くくっ、と笑う御原に柚香は疑問符を浮かべていた。



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