願いを流れ星に込めて

□星三十夜
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自分が、人でないような錯覚に度々陥るようになったのはいつからだろう。
もうずっと……
―――多分、一生分の恋をしたあの時から、空っぽの心を抱えて歩き出したあの日から……。

11月。

「蛍――っみてみて――!!木の葉吹雪―――っっ!」

じーちゃん元気ですか?蜜柑です。

「あらん。蛍―っっ!もーサボんな〜!」

アリス学園はすっかり秋冬色。
そうそう!この間いい事がありました。
といってもウチの事ではないんやけれど。

「すごーい、委員長―っっ」「優等生賞おめでとー!うらやまーっ!」

「ありがとうみんな…っ」

「いいなー、一週間の里帰りかー」

「いいなーセントラルタウンの食事3か月分かー」

「ごめんね、なんか僕だけこんな…」

「何いってんの、気にすんなよー。だってぼくらどうせばかだもーん」

「そういえば委員長、前に妹が生まれたとか言ってなかった?」

「うん、僕4年前からずっと学園だからまだ写真でしか見たことないけど……もうすぐ3歳になるんだ。もう喋れるし歩けるんだって。妹が僕に会えるのをまだか、まだかって毎日聞いてくるんだって。僕も妹に会えるのすごく楽しみなんだ」

そういって待ちきれないかのように早速1週間の里帰りの旅にでた委員長なのでした。
いいなぁ…うらやましいなぁ…

(じーちゃん…)

そして、その一週間はすぐに終わって、今日は委員長の帰ってくる日。蛍はお土産を楽しみにしているようです。
でも、ここ最近学園ではちょっと怖い事件がよく耳に入ります。

「ここ最近色んな形で毎日のように話題にあがってますが、今日は改めて僕からも『能力紛失事件』について皆さんにお話ししたいと思いまーす。はい注目―っ。
知ってる人も多いかと思いますが、今、世間で騒がれているいきなりアリスを失くす『アリス紛失事件』、学園側もこの事には大変心を痛めています。
なぜ『紛失事件』かというとこれは調査の結果、『能力のかたち』のアリスを失う2パターンとは関係ない、と判明しているからなんです。紛失の原因は人為的なものかもしくは自然発生のウイルスetcなど色々考えられますがまだよく分かっていません。
分かっているのは1週間前に第1被害者がでてから今週に入って6人目。いずれも外で活躍している大人のアリスです。特徴として紛失は前触れなく突然起きるということのみ。今のところ、学園内ではこのような紛失事件は起きていませんが、なにぶん今後の成り行きは予測できない状況です。
皆さんも何か自分もしくはお友達に異変があればすぐに先生に知らせてくださいねーok?」

「はーい」

(ナルの嘘つきめ…)

部屋の隅で、千悠は平然とした態度でいるナルにため息をついた。
学園でも一部しかしらないことだけれど、被害者は…中等部にも及んでいる。

(勝手に耳に入ってきた…)

ってことが、私にとっては危ない。
勝手に。

(…抑えきれなくなってる?)

それは、自分の中のアリスが…コントロールできる範囲外まで及んできているということ。
その原因は…きっと、先月の大きい任務のせいだ。
あの、レオとの対峙…。それと、その後の帰りにペルソナ抜きでやった大量破壊。

(あれで…アリスを使いすぎた)

相変わらず頭は痛いし、校長の横暴も止まらない。
だけど、何でだろう。棗に…仕事を回したくない。

違う、棗にアリスを使わせたくない。

(……)

ねぇ…最近、おかしいよ、棗。
千悠はうっすら変色し始めた爪を噛んだ。


 
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