マリオネットとワルツを
□作品番号Op.9
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「な…棗…走って…もう追ってくる…」
肩を担いで走る。走る。
「重い…」
ズシッ…
「ぎゃっ…」
ズザザ…と地面を擦る音…。二人は階段の下に落ちてしまった。
「…おい、水玉。お前逃げろ……」
ぜい、ぜい、と会談を落ちてしまった衝撃でさらに体力をそがれた棗が言った。
「へ?」
「1人なら…今のあいつらなら何とか逃げ切れる、多分。…行け」
「は?あんた何ゆうて…そんな体のくせに」
「いいから行けブス。何度も言わせんな」
ムッカ
「いやじゃ!」
「行けっつってんだろボケッ!」
イラッ
「行かへんゆうてるやろドアホッ!!ここまできたの誰のためや思てんねん。あんたおいてったらほんまつてんとーもええとこや!ルカぴょんも蛍も先生もパーマだってみんな、あんたが無事に帰ってこれるように頑張ってんのに。それを無視してウチやあんたがここで諦めるなんて許されるかいっ!…あんたらの抱える問題がどんだけのもんかなんてウチには分からんけど…でも…」
「おい、こっちの方で声が聞こえなかったか?」
…!
(…やっば…)
「おい、そこの階段の下見とけ」
「はい」
あわわと慌てながら、動けない棗を庇うように鉄パイプを持った蜜柑。
―――先のこと諦めるなんて
「…やれるとこまえやってみる」
ウチらにはまだ早すぎる
「ウチは学園に戻ってまだまだやりたい事沢山あるもん。……文化祭かてまだ何もやってない。何が何でもあんな奴らに捕まるわけにはいかへんねん」
楽しい未来はきっと
「……あんたかてそうやろ?」
諦めずに歩いた
「一緒に帰ろう、学園に」
その先にあるもんやから
「みんなまってる」
「……」
「い…いました、ガキ2人共っ、こっちです!」
蜜柑がやってきた男にパイプを振り回した。
「わっ」
棗の手を引いて上に上がろうとしたそのとき、
「逃がすか…っ」
瞬間移動のメガネがパイプをふって蜜柑を鋼鉄にぶつけた。
「ぎゃっ……っう…」
蜜柑の体が、段々下がっていった。その頭からは血が。
棗がそれを目視した。
「捕まえたぞ!」
棗が捕まった。
「…てめえ「なっ…」てめえ!!!」
棗が目を見開いている。
「棗っ!!」
ドンッッッ
怒髪天に来た棗の怒りが弱った体から巨大な力を放った。
開放感とともにやって来た疲労の中、最後に棗が見たのは…どこか見覚えのあるバラの形をしたピアスだった。
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