マリオネットとワルツを
□作品番号Op.9
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体が痛い…寒い
何かの気配がする、何かが…物を喰ってる…?
何だ…?犬…?敵?
寄るな……
目を開けた棗がはじめに見たのは、人間というよりは犬と大差ない二匹(その名を蜜柑とスミレという)がどうにかして拘束している縄を噛み千切ろうとしているところだった。
「あ、パーマパーマっ。棗目覚ましたよ」
こちらが起きたと気づくや否やその二匹がかくかくしかじか話すもんだから棗の眉間に深い皺がよったのは言うまでもないことだった。
(……どこだここ)
「……どうやらここって港の倉庫街っぽいの。潮のにおいがするし…倉庫の出口は二つ。片方は荷物でうまってるけど。直感で倉庫外の様子を探ろうとしたけどなぜだか力が全然働かなくて。多分レオの仲間にアリスを封じる『結界師』がいるんだと思うけど…もしかするとこの倉庫全体に結界が…」
(レオ…あの野郎か…)
「アリスも使えないし、結界のせいで学園がここを見つけられないとしたら密輸船が来るまで何とかしてここを脱出するしか…」
(結界に…薬と体調のせいで絶不調…プラスバカ2匹…結構なヘマ踏んだわけだ……)
「……おいバカ」
「バカゆうなっ」←認めとる……
「…お前その耳につけてるパンダ何だよ」
「はあ?こんな時に…。これは蛍に貰った「通信用イヤーマフラー」…あ…」
空気が固まった。
(…バカ蜜柑…)
一方、学園内では…。
「…レオが『反逆者』だったとは、これはうってかわってゆゆしき事態ですよ」
「…ということはこの事件、裏であのZが糸を引いてるってことに」
「…これは一刻の猶予もありませんな」
パ〜ンダパンダーパンダのダンス〜
「はい、こちら蛍です。ああ、蜜柑?あんたやっとスイッチ入れたわね」
「今井さんっ!?連絡取れたの!?」
「…何か外野がうるさいからかわるわね。それよりアンタ大丈夫?」
ナルは驚き、ルカは青ざめ、ジンジンは怒っていた。
蛍だけが真剣な面持ちでいた。
『―――…もしもし蜜柑ちゃん?僕だけどきこえる?』
「鳴海先生!!」
「先生〜〜っっ」
久しぶりのナルの声に蜜柑の目には涙が浮かんだ。
『今井さんから大方の事は聞いたよ。大変だったね、3人とも無事?』
「あんなあんなっ、ここどっかの港の倉庫やねんっ!あ…棗の具合まだけっこー悪くて、それにここ結界みたいなん張ってあってアリス使えへんし!それとそれとっ」
「今気失ってるフリして縄で縛られてるんですっ!」
天の救いかと思える鳴海の声に二人は必死になってひそひそ話した。
『お…落ちついて声小さく小さくっ!蜜柑ちゃん、声出すのは危険だからここからは黙ってきいて。3人共このまま気失ったフリは続けたまま。こっちにそちらの状況がきこえるようマイクをONにしたままでいるんだ。僕らが場所の特定を図る間、その手足を拘束してる縄だけど自力で引き千切るか解くか、それが無理なら―――これはあまりいい案じゃないけど棗君に無理してもらって火で縄を燃やすんだ。弱ってる体にはかなり負担だろうけど…少量の火でいい。棗君本来の力なら結界を壊すくらいたやすいハズだ』
(ち…簡単に言いやがって…)
棗は舌打ちをしたあとに少量の火で結界を揺らし縄を燃やした。
ビビ…という音に蜜柑とスミレが驚いた。
『縄をはずした後確実に逃げるチャンスが出来るまで縛られたフリを続けるんだ』
縄を解いた棗はすぐに蜜柑の縄をほどきにかかるが、その息遣いは荒く、苦しそうだった。
『それと2つ重要な事がある。1つはできる限り自分のアリスを敵に明かしちゃダメだ。敵にこちらの手の内を見せるということは相手が対処してくる分、こちらに不利に働く事が多いから。それともう1つ一番重要な事。何があってもレオの”声”をきいちゃいけない。もしきいたら……』
蜜柑の耳からイヤーマフラーが外された。
(え…)
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