マリオネットとワルツを
□作品番号Op.3
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数分後、大してトラップもなく人もなく(夜だしなぁ)目的地に着いた。
そして、ノックもなくいきなりドアを開けた。他に人がいたらそこまでだが…まぁ、勘だ。
「……誰だ?」
予想的中。目の前には手元のライトだけをつけて書類に目を通すあいつの姿。他に人気なし。
10年たっても変わらない…といっても、それが彼の『アリス』なので野暮な言い方をしてしまった。
「『だ〜れだ♪』」
依然としていすに座ったままの彼からは、暗いままのこっちを見ることはできない。
だけど、こっちからは逆。彼の一挙動が手に取るようにわかる。
これには人間の目の構造に論点をおかなければならないのだけれど…この際は割愛させていただく。
(人……か?……いや…これは)
ととと、と寄ってきたのは子供。
いやな感じがして、彼はすぐに伏せた。
「『どーん!』」
その言葉で子供の右腕がロケットになって彼に向かって飛んだ。正確に言うと…彼がいたところに飛んだ、だったに留まった。
「ちっ…逃げた」
「何がちっ、だ。バカが」
「あいたっ!」
パコーン!といい音がして透は頭を分厚い書類で叩かれた。
「何するんだよ、一己!こうしてせっかくしばらくぶりにあったっていうのに酷い仕打ちじゃないか!」
「……それはこっちの台詞だ」
辛くも人形の攻撃から逃れた、アリス学園高等部校長行平一己は静かに怒っていた。
「でもすごいだろ?私の最新作だ。全身にいろいろな仕掛けを仕込んである。ロシア連邦に頼まれた軍練習用子供型人形Op1368だ!」
「相変わらずなのはいいが…それをどうして私で試す…」
あっははは…と目をそらした透はようやく明かりをつけた。そこでようやく二人は随分会わなかったお互いを見たのである。
透のもともと長かったが、さらに輪をかけて長くなった髪が…時間の経過を示していた。
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