願いを流れ星に込めて
□星三十七夜
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ドォンッ
「きゃぁあっ」
「居たぞ、こっちだ!」
捕らえろ!
戦闘服を着込み、攻撃的なアリスを使う大人が…一人、また一人と初B組のクラスメイトを連れてどこかにテレポートさせる。
「野乃子ちゃん!アンナちゃん!」
「やめろっ!追うなっ!今は逃げるんだ!」
俺たちには、約定がある!
それは叫べないけれど、目で訴える。
「こいつら、意外に強いぞっ!アジトの警護レベルを引き上げるんだ!連絡を取れ!」
「させるかよっ!」
「翼!」
パァッ、と殿のアリスの光が翼にかざされ、荒業の影引っ張りでZの連中を転ばせると、つかさず蛍がバカン銃で連射して気絶させる。
「行くぞ!いいか絶対に離れるなよ」
俺たちは内部の構造に詳しいわけじゃない。それに、大人と比べたら戦闘能力が低い。だから固まって突っ切るんだ。今は奇襲が成功しているから中に進むのは簡単だが…警護レベルを引き上げられたり、中枢まで俺たちの情報が届いたら状況は悪くなる。その前に、必ず千悠の居る部屋にたどり着くんだ。
「次の曲がり角にZがいるよ」
心読みアンテナを張っている、心読み君が次々に敵を知らせる係りを担っている。
「わかった!僕が止めてみせる!」
「委員長!」
スプラッタな幻覚を見せてノックアウトさせる。
…委員長、怖いの苦手じゃなかったの…?
千悠ちゃんの為ならね。頑張らないと。
「…クンクン。…3キロ先に千悠様の匂いが!」
戦闘に向いてないアリスの子たちは寮で待機している。その中でも、千悠を捜すのにどうするか、という点でスミレの嗅覚と直感力はかなり役に立っていた。
「本当か!?」
「でも、その範囲内ってことだけで…詳しくはわからないし、どう行くのかも…っ」
「十分や!」
「佐倉声大きいよ」
いきり立つ蜜柑をルカがなだめる。アジトに住み着くネズミたちを駆使して階段や行き止まりなどを教えてもらって道案内をするのはルカだ。
「ルカぴょん、ネズミたちはなんて?」
その他は、攻撃・防御に分かれて臨機応変にZのメンバーを迎え撃ちにしていた。
「……」
「おーい、ルカぴょん?」
「なんか、とても複雑…みたいで…」
この子達も奥まで行ったことはないみたい…。行き方はわかるけど、行った奴は居ないし、戻って来れないかもって。
「上等だ…。千悠は助ける。絶対に」
「居たぞ!学園の生徒だ!」
チッ
わらわらと出てくるZは中に進むほどに手ごわくなっている。しかも、結界師が居るのか、心読みのアリスやスミレの直感に引っかからないのだ。
「わああああっ」
「炎の渦!?」
ま、俺が増幅してるしな〜。ひらひらと手を振るのは殿で、初B以外の人員@である。
翼と殿以外は、侵入事件のときに目を付けられていて自由に身動きができないのと、直接的に戦闘に関わって無事に帰ってこれると思われる視点で考えた結果だった。
秀一と昴は帰ってきたときの全面サポートを約束してくれている。
「棗〜!」
「サスガっす、棗さん!」
「……チッ……もう、簡単には通してくれねぇみたいだな」
棗が舌打ちをすると、巨大な炎の渦がピキピキと音を立てて凍り、床を打つ。
「氷のアリスか…厄介だな」
足を打ち鳴らすのは翼で、凍った床はよく影を伸ばしてくれず、アリスが発揮できない。
「お前ら氷付けにされたくなければ大人しくしろ!」
戦闘に居る氷使いが怒鳴る。そして、次の瞬間にはもう吹雪を出し始める。
「チビっ!」
「はい!」
全力でやれ!
増幅されたアリスで蜜柑が全面無効化する!Zがひるんだ隙に、蛍はどこからともなく大きな大砲を取り出して奴らに向けて打った。
ドォォン
「ほ、蛍ちゃん…!?」
「大丈夫よ。死なない程度に精度は制限しているから」
そういう問題?!?!
すごく大きな音がしたんだけど…。
「早く千悠と星海さんのところに行きましょ。クラスの子たちも心配だわ」
…病み上がりなのに一番元気じゃないか?
誰もがそう思ったそうだった。
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