突発ネタ置き場
□とある被験体の話
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真っ暗な世界の中、ふとどこからか吹いたひんやりと少し冷たい風が頬を撫でる。
もう霊勢が夜域に入ったのだろうか…。
だとすれば“実験”が終わってだいぶ経つはずなのに、ボクの目は何も映さない。……本当に迷惑な目だ。
また吹いた風に小さく身を震わせて、ボクは壁伝いに立ち上がり、いつもの部屋を目指す。
今日はずいぶんと騒がしい気がする。世界が見えないから状況はよく分からないけど、騒がしい事に間違いはない。
ならば、この騒ぎに紛れて逃げてしまおうか。
そんなバカな考えが一瞬過るが、こんな目で逃げれる訳がないので止めた。
早くいつもの部屋に戻ろ―――
「うわっ…!?」
「っ!?」
不意に何かとぶつかった。
ボクが床に倒れた瞬間、頭上から響いた「ご、ごめんなさいっ」という声はずいぶん若くて、聞き覚えのない声だった。
「誰……?」
「あ、えっと……か、勝手に入ってすみません…。僕、教授を探していて…えっと……」
要領得ない話だ。
ついに黙り込んでしまったその子(たぶんボクより若い)は迷子か何かだろう。
「……ついてきて」
「え?」
「探してるんでしょ、キョージュさんって人のこと……」
そう言えばその子は少し戸惑ったように「あ、ありがとう」と答えた。
「…別に、ついでだよ」
のろのろ体を起こしてボクはさっきまで伝っていた壁を探す。どうやら衝突して倒れた時に壁から離れたようだ。
なかなか見付からない壁を探しながら手で虚しく宙を掻いていると、不意にその子が「あ、」と声をこぼしてボクの手を取った。
「………何?」
「え、壁探してるんでしょ?目、見えてないみたいだし…」
「…………どうも」
よく気付いたなぁ……気味が悪い…。
その子の案内で辿り着いた壁を伝い、ボクはその“キョージュさん”の居そうな部屋を目指す。
……でも、そんな人がここにいるとは思えない。だって、ここは…―――
「あ、僕…ジュード・マティス。君は…?」
「…………ヒケンタイ…」
「え?」
「何でもない。早く行くよ」
ボクに名前なんてない。……いや、あったのかもしれないけれど、忘れた。
代わりにあるのは“ヒケンタイ”という無意味な代名詞。まぁ、別に困る事はないから気にはしない。
歩く速度を早めたら、後ろからついてくるその子、ジュードの足音が少し小走りになった。
……早くこの暗闇を抜けたい。
―――――――
前々からぼちぼち何度か呟いていたTOXの増霊極被験者。
まだ設定は曖昧なのですがね…。簡単にメモっとく
第二世代型の増霊極被験者。性別未定、名前も未定。とりあえず盲目ボクっ子。
増霊極は脳に埋め込み、あるいは義眼という形にしたいなぁ…と。目の代わりにもなるよ。
増霊極は常に発動状態。普段は目が見える程度の体に優しいエコモード。しかし、戦闘時には動体視力がめちゃくちゃ上がって神回避!みたいなイメージ。しかし、その反動でしばらく何も見えなくなる……とか。(今回がそれ)
元々はア・ジュール出身だが、研究所からアルクノアに誘拐されラ・シュガルへ。イル・ファンの研究所で監禁状態。
……あ、増霊極発動時や使用不可状態の時に目の色が変わっても面白いな
以上、厨二的メモ
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