ほか
□大切なもの
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『本当に大切なものは目には見えない』と、誰かが言っていた。
あれは果たして本当だろうか。
「なぁ、アンタの大切なものってなんだ?」
図書室から借りてきた資料に付箋を付けながら読み進めていると、隣に座るスコールが聞いてきた。
「ん?…大切なもの?」
「あぁ、一番大切なものだ」
何で急に、とも思ったがスコールが折角聞いてきたので、考えてみることにした。
「えー、そう言われても困るけど…」
「なにか無いか?…今まで貰ったプレゼントとか…あるだろ?」
家族、友達、ガーデンのみんな、故郷、…それから……
たくさん大切なものはあるけれど、どれが一番か。なんて決められない
「じゃあ、スコールの大切なものってなに?」
「俺が聞いてるんだぞ…」
「いろいろ考えたけど、よく分からなかった。欲張りだからどれも大切だ!って思うんだ。これがあたしの答え」
スコールは?と聞くと窓の向こう側を見つめながらぽつりと呟くように言う。
「『大切なものは目には見えない』って、誰かが言ってた。」
「うん」
でも、とスコールは続ける
「でも、俺はそんなの嘘だと思うんだ。だって、俺の1番大切なものはいつも俺の隣にいてくれる。そうだろ?」
ゆっくりとスコールの逞しい腕があたしの体を捕らえて引き寄せていく。
大切なものは目には見えない。
それでも大切なものと言われて君に姿が1番に目に浮かぶんだ。
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