ほか
□飛んでいった白
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「ぅわ…っ」
自分の帽子が飛んでいったのに、わたしはただカモメみたいなその帽子をぼうっと眺めていた。
その日、ウォーターセブンは朝から風が強かった。
それでも新しく買った白い帽子を被りたくて、お構い無しに家を出た。
家を数歩出て間もなく、新しい帽子はカモメのように飛んでいって人様の家の屋根に引っ掛かってしまった。
「あ。」
わたしはそこで我に返り、帽子を取ろうと思ったが当然帽子があるのは手の届く範囲ではない。
どうしようかと考えを巡らせていたら、また一羽、黒い鳥が飛んでいた。
その黒い鳥は空から降ってきて、最終的には人の形になった。
わたしの隣に舞い降りてきたのはガレーラの誇る船大工1番ドッグ職長、カクさん
「どうしたんじゃ?」
「あ、カクさん」
ことの成り行きを話すとカクさんは笑って「ワシに任せい」
といって軽々と帽子を取ってきてくれた。
「ほら」
「ありがとうございますー」
カモメだったモノはわたしの手のなかで帽子へ元に戻った。
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