ほか
□転がるオレンジ
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そういって、目の前に差し出されたのはドロップの缶。
「何だ、これは」
「あれ?ルッチ知らないの?ドロップだよ、ドロップ。」
「そんな事見れば分かる。」
「さっきね、懐かしくなって買っちゃったんだ。いらない?」
「……くれ」
そう言って掌を差し出すと、ドロップの缶からカラン、コロンと音をたてて転がってきたのはオレンジ色の飴玉。
「わたしね、小さい頃オレンジの飴大好きだったの」
「いるか?」
「ううん、だってそれはルッチの分だもん。」
そういって、ドロップの缶から白い掌に転がってきたのはルッチと同じオレンジの飴。
「あ、オレンジだ。」
嬉しそうに笑って、飴を口に放れば甘みが口内いっぱいに広がった。
その後俺達は何を喋るわけでもなく、ずっと空を眺めていた。
口の中にはただ一粒のオレンジが転がっていた。
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