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□ひみつの、にわ
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いつもより一層と静かなこの家に、ゆっくりと足を踏み入れた。
紙がそこらじゅうに散らばり、家具は散乱、家のなかは荒らされたかのようになっている。

外にはテッドの車とモートの車、
そしてエイミーの車が何故だか岩にぶつかったまま、キーがつけっ放しだった。
3人ともいるはずなのに、一切その気配を感じない。

「モート…?エイミー?テッド?……モート…?」

誰もわたしの呼びかけには応じず、家のなかはひっそりとしていた。
何処かで誰かがスコップを振る音が聞こえた。

「……庭…?」

ゆっくりと庭に続く出口に歩み寄ると、そこにはスコップを片手に黒い帽子を被ったモートの姿があった。
わたしは何故か酷く安堵した。

「モー…ト……」

彼の名前を呼ぼうとして傍に寄ろうと足を踏み出すと、そこにはエイミーが目を瞑り、うつ伏せになっているのが見えた。
いや、死んでいるのが。
見えた。
何故だか分からないけれど、はっきりとエイミーが死んでいると分かった。
頭のなかで煩いくらいサイレンが鳴り響いてる気がした。
危険だ。立ち去れ。早く立ち去れ、と。

「モート…?ねぇ、モート…?」

逃げなければいけないと、誰かが囁くが、
ここにいるのは優しい彼だけだ、逃げる必要なんて何処にも無い。
そう、もう一人の誰かが囁いた。
一歩ずつ引き寄せられるように、わたしはモートに近づいていく。
階段を降りきって気付いた。
テッドが血まみれで倒れているのを。

「…っ、モ…ート…」

モートはゆっくりと振り返り、鋭い眼差しを私に向けた。

「俺はジョン・シューターだ。モートは死んだ」

そう言い放つと手にしていたスコップを地面に突き立てて、わたしの方に歩を進めた。

「モート…?何言ってるの?…ねぇ…モートが…やったの?」

何を何て言いたくなかった。

「違う、俺がやった。」

とん、と背中に何かが当たった。
後ろは見なかったが、それは家の壁だと分かった。後ろは壁、前はモートで逃げ道は塞がれた。
目をぎゅっと瞑って、
次に目が覚めたら、これが夢だったらいいのにと思った。

不意に、唇に柔らかな感触が落ちてきた。

「や、っ、やめて、…」
「そう怖がるなよ。いつもモートとキスぐらいしてるだろ」
「モート、や…っ、めて…」
「俺はジョン・シューターだ」
「モートっ、モォ…ト…!」

「愛してる」


モートの体から、何時もの香りとは違う血の匂いがした。


嘘だよ。

といつもの笑顔で笑って 






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