拍手連載第五話
「折角だし、先生の分のおはぎもあまっちゃったし、松陰の家に遊びに行きたいけど…?」
おはぎは置いておいて、折角だしの意味がわからない。
つっこみたいけれど、どうやら僕に家で遊べるのかを聞きたいようだから、素直に答える。
「大歓迎だよ。梅兄さんも蒼香に遊びにきてっていってたし。」
「本当!梅さんって本当いい人だよね!理想のお兄ちゃん!」
蒼香は兄がいない。
一人っ子だからということもあり、僕の兄さんにとても懐いていた。
…そういうなら、
「僕と結婚すれば、梅兄さんが蒼香のお兄さんになるね。」
照れた反応がほしい。
冗談言わないでよ、とか。
でも蒼香の場合、そうはいかない。
なにせ彼女は、
「あ、それはそうだね!それもいいかも!」
天然だから。
こんなこといっておいて、彼女は叔父上しか見てないんだ。
「…まだ、兄さんの方がましだよ。」
蒼香が叔父上を好きだなんて、反吐が出る。
蒼香は純粋な恋のつもりでも、あの人は大人だから…。
…大人、だから。
僕は子供なんだ。
あぁ、自己嫌悪。
文も言っていたが、どうも女性と言うのは年上の男に憧れを抱くようだ。
僕は、同い年蒼香が好きだけれど、好きな女性だけでいえば年下の方が好きかなって思う。梅兄さんもそうだし、父上も若い子の前では照れてるから男の人は逆なんだろう。
不思議だなぁ、なんてなんたる現実逃避。
「お兄さんも格好いいけど、松陰も素敵だよ!頭良くて、頭良くて、頭良くて…。」
「頭いいことしかないんだね。」
そう言うと、蒼香は首を横に振った。
「あとね、杉さんところは皆優しい!!」
僕だけじゃないじゃんか。
まぁ、可愛いんだけど。
「家、来る?」
「うん!」
まさか、家にあの人がいるなんて思わなかったから僕は蒼香の願いを承諾してしまった。
後悔、した。
次回に続く