弐
□【花簪】
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―――見つけたのは、とても小さな、綺麗な花の簪。
「……。」
ほしい、なんて感情より、綺麗だと思って見つめていた。
でも、きっとあんな簪の似合う女性はとっても綺麗な人だな、と思ってしまう。
似合うようになりたい、なんて。
「何?あの簪ほしいの?」
意地悪そうに笑った兄の笑顔が、太陽の光でキラキラ輝いていた。
「…別に、いらない。」
ぽつりと答えると、兄は言う。
「うん、お前には似合わないね。…もったいない。」
あのときは確か、そう何故か涙があふれてきた。
今なら、言い返すのにすごく、悲しかった。
「もう、仕方ないな。」
兄は笑うと私の手を引いた。
涙のあとに風が触れ、とても冷たかった。
兄のては、温かかった。
「ほら。」
兄が、私の髪にさしたのは朝顔。
幼い私には、それがつりあってた。
今ならきっと突き返すけど、あのときはすごく嬉しかった。
―――――「大人になったら、本物の簪買ってあげるから。」
そういって笑った兄の笑顔は優しくて、落ち着いた。
―――――“りんっ”
髪にささる、あの日の綺麗な簪。
でも今は、あの朝顔がほしいだなんて
我がままだよね。
九一兄ぃ。
終