□【花簪】
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―――見つけたのは、とても小さな、綺麗な花の簪。




「……。」

ほしい、なんて感情より、綺麗だと思って見つめていた。


でも、きっとあんな簪の似合う女性はとっても綺麗な人だな、と思ってしまう。


似合うようになりたい、なんて。



「何?あの簪ほしいの?」

意地悪そうに笑った兄の笑顔が、太陽の光でキラキラ輝いていた。


「…別に、いらない。」


ぽつりと答えると、兄は言う。


「うん、お前には似合わないね。…もったいない。」


あのときは確か、そう何故か涙があふれてきた。


今なら、言い返すのにすごく、悲しかった。



「もう、仕方ないな。」



兄は笑うと私の手を引いた。



涙のあとに風が触れ、とても冷たかった。

兄のては、温かかった。





「ほら。」



兄が、私の髪にさしたのは朝顔。


幼い私には、それがつりあってた。




今ならきっと突き返すけど、あのときはすごく嬉しかった。






―――――「大人になったら、本物の簪買ってあげるから。」






そういって笑った兄の笑顔は優しくて、落ち着いた。



































―――――“りんっ”


髪にささる、あの日の綺麗な簪。














でも今は、あの朝顔がほしいだなんて







我がままだよね。






九一兄ぃ。










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