□【運命】
1ページ/1ページ

「……どうか、御助けを…。」

手を合わせて、天を仰ぐ。

天女でも舞い降りてきそうな月夜ではなく、降り注ぐ雨。

冷たく身体に当たる雨に、曇天の空に願う。

「先生を、お助け下さい…。」

剣もなにも使えない。

溢れる知性、容姿の美しさ。

そんなものは今、必要がない。
意味がない。

だから、祈る。

なにもできない己のさだめ。

祈る、願う。

月明かりは差し込まない、雲の間に祈り捧げる。

風が舞い、身体に冷たい雫を打ち付ける。


「御助けを。」


傍らに寄り添うは虚しさ。

夢幻の想い人は今は遠く。


真夜中、鴉がなく。


嘲笑うような鳴き声にさえ、縋る。





あぁ、どうか御助けを。








 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ