弐
□【運命】
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「……どうか、御助けを…。」
手を合わせて、天を仰ぐ。
天女でも舞い降りてきそうな月夜ではなく、降り注ぐ雨。
冷たく身体に当たる雨に、曇天の空に願う。
「先生を、お助け下さい…。」
剣もなにも使えない。
溢れる知性、容姿の美しさ。
そんなものは今、必要がない。
意味がない。
だから、祈る。
なにもできない己のさだめ。
祈る、願う。
月明かりは差し込まない、雲の間に祈り捧げる。
風が舞い、身体に冷たい雫を打ち付ける。
「御助けを。」
傍らに寄り添うは虚しさ。
夢幻の想い人は今は遠く。
真夜中、鴉がなく。
嘲笑うような鳴き声にさえ、縋る。
あぁ、どうか御助けを。
終