弐
□【逢引しませんか?】
1ページ/1ページ
「逢引しましょう!」
そう言うと文さんは眉をひそめた。
「誰が逢引などするか。お前なんかと付き合ってると知られれば私は笑いものだ。」
そう言うと、文さんは髪をかきあげて私をみた。
ちょ、色っぽいですよ先生。
い、色仕掛けなんてきかないんですからね!
「そんなぁ!ひどいですよ!私これでも結構かわいいって言われるんです!高杉さんとか高杉さんとか高杉さんとかに!」
私が反論すると文さんは、吐き捨てるように言った。
「高杉にしか言われておらぬのだろう。あいつは趣味がわるい。」
「ひどいですよ!」
反論がてら私が背後から文さんの姿勢のよい背中に、あたっく……抱き着くと、文さんは一度咳払いをして、正面から私を抱きすくめた。
わお、先生ったら大胆ですね、とか言えないくらいドキドキしてしまったじゃないですか。
折角だから動かず腕の中で抱きすくめられていると、先生は白く長い指で私の髪をすいた。
気持ちいい。
そんなことを思って、目をつぶって文さんの胸に身を預けていたら、いきなり文さんが耳元で囁いた。
「……誰にもかわいい恋人を見られたくなくて逢引したくないと言ったら…どうする?」
「…え…!?」
逢引を嫌がる理由
「冗談に決まっているだろう?私がそんなこと言うとでも思ったか。」
「なっ!!酷いです!」
(…冗談だ。)
(…え?…ってそれはどういう…?!)