血桜葉隠【大和魂】

□第七志 この手で
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「離して下さい!」

士桜は大声をあげた。

新撰組と歩いている。

考えるだけでぞっとする。

それが今現実に起こっている。

「泣いてるお嬢さんをほっとけはしないぜ!」

永倉が笑う。士桜は笑い事ではない。

言う気など一切ないが、もし自らが攘夷志士だと吐けば、同志にまで迷惑がかかる。

“高杉さんにも…”

再び涙が溢れ出した。

「永倉さん。怖がってるじゃないですか?」

沖田が呆れたように言う。

「黙れ!離せ!私は武士だ!それ以上言うなら斬り捨てるぞ!武士のなりそこないが!」

きっと兄や松陰が聞けば、もっと上品な言葉づかいをしろと言うだろうか。

士桜は少し後悔した。

新撰組といえど、大和魂を持つ武士の端くれである。

酷いことを言ってしまった。

「す…すいません……。」

謝っていた。馬鹿だと自覚する。

何を躊躇しているのか?

大和魂といえど誤っているものは大和魂とはいえない。

ちらりと新撰組を見る。

「くす…。」

沖田が一生懸命、笑いをこらえていた。

何故だろう?

この男の真意が読めない。

「…沖田…さん?」

「面白いね。君。今の流れで謝るなんて。」

謝ったのは失敗だった。

「君さぁ熱しやすく冷めやすいよね。」

「五月蠅い。」


……その士桜の姿を見ていた人間に士桜は気づかなかった。
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