血桜葉隠【大和魂】

□第六志 嫉妬と後悔そして出会い
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「高杉さん…ごめんなさい。」

何度もそう繰り返し呟いた。

どうして怒らせてしまったのか、など考えることもしなかった。

士桜には『怒らせてしまった』。

それだけが確かな事実だったからだ。

「兄上!玄瑞兄上!ごめんなさい。私は馬鹿です。」

涙で頬が濡れる。

風が触れる度、冷たく、まるで悲しみを教えているように感じた。

「っ高杉さん……。」

その場に座り込んだ。

そして士桜はその人達に出会ったのだった。


…………「くそっ!」

高杉は声を荒げた。

「何でこんな苦しいっ!士桜…。」

苦しかった。そして後悔に出会う。

「玄瑞…俺は士桜が好きだ。狂ってしまうほど愛おしい。」

高杉には『雅子』という正妻がいる。その上、心より愛す遊女、『おうの』がいる。

「許してくれ。誰よりも愛おしい。」

だがもう遅かった。

士桜を泣かせてしまった。

その事実だけが高杉を追い詰めた。

………「おい。大丈夫か?」

座り込んで泣いていた士桜に声を掛けた集団がいたのだ。

酒の匂いと白粉の匂いが鼻に届く。

島原(遊郭)の帰りだろうか?

士桜はゆっくりと顔を上げた。

「おい。新八。女じゃねえか?」

着物では刀を振るえない。

常に士桜は袴を身に着けていたため、
可愛らしい顔を上げないと男に見えていたのだろう。

「どちら様で?」
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