血桜葉隠【大和魂】
□第四志 楽しい時間
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禁門の変から、一月のときが流れた。
士桜は高杉と行動をともにしており、その他の知人と会うことはなかった。
久坂玄瑞の死は衝撃的で知るものは多かったが、高杉の計らいか士桜の前に現れるものはいなかった。
そんな頃だった。
「暑いですね。高杉さん。」
「そうだな。士桜。」
夏の風にあたりながら、二人は談笑していた。
これも高杉の計らいか、小さな戦に互いがでることは少なかった。
二人でいる時間が主で、それは些細な幸せのときとなっていた。
今日もいつも通りのときが過ぎる。そう思っていた。
「高杉殿。桂小五郎殿がお見えです。」
一人の同志が現れ言った。
高杉と士桜の視線が交わる。
「…上げろ。」
「はっ。」
同志が下がると、すごい勢いで桂が入ってきた。
高杉が静かに呟いた。
「すべてが崩れた。」
士桜は苦笑いを浮かべた。だが、たしかに幸せの日常は崩れたのかもしれないが、久しぶりに桂に会えて嬉しいとも思った。
「士桜!久しぶりだな。」
高杉を無視して、桂は士桜の肩に手を置いて話し出した。
「…大丈夫か?玄瑞君のこともあったが。」
「はい。桂さん。高杉さんや皆さんも優しいですし。」
桂は静かに微笑んだ。
士桜も微笑かえした。
暫くの沈黙がすぎる。
その空気を破るように高杉が口を開いた。
「江戸にいらしたのでは?桂さん。」
微かに微笑んではいるが、不機嫌な雰囲気が漂っていた。