血桜葉隠【大和魂】

□第三志 高杉の誘い
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「本当は…。」

今まで泣いていた士桜が、呟くように言った。

「兄の死を肯定したくなかったのかも知れません。」

高杉は何も言わなかった。

言えなかったと言ったほうが正しいか。

かつて桂小五郎の言っていた言葉に士桜が大人びているだという言葉があった。

高杉は冗談だろうと聞き流していたが、今なら分かる気がした。

士桜は大人びている。

「私がとらわれていたのは、兄の死でなく、武士であるということだったんです。」

士桜が紡ぐ言葉に、高杉は無言で耳を傾けていた。

「武士である故に感情は出さない。感情こそが迷いだと思っていましたが…、自らにつく嘘が迷いになっていたんです。」

齢14の女子がここまでの意思をもつとは、高杉も驚いていた。

それと同時に欲が出てきてしまう。

高杉といえど、人の性には立ち向かえなかった。

「士桜。」

今まで黙っていた高杉も欲のままに、口を開いた。
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