血桜葉隠【大和魂】
□第一志 兄の死
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1864年(元治元年)
禁門の変(蛤御門の変)
「久坂玄瑞殿が鷹司邸で自刃なさいました。」
士桜の元に現れた同志の一言で、士桜は凍りついた様に動けなくなった。
同志が伝えたのは兄の死であった。
士桜も兄…久坂玄瑞も武士である故、互いの死など覚悟していた。
だが覚悟と実際は重みが違った。
すんなりと受け入れられるものではなかったのだ。
士桜の感情は、その時は悲しみではなかった。
ただ、何か大きな喪失感が貫いた。
………禁門の変は長州藩の敗北におわった。
そればかりか、長州藩は御所に向けて発砲したことにより、朝敵の烙印を押されることとなった。
そして、長州藩が負った傷はそれだけではなかった。
禁門の変の犠牲者は、久坂玄瑞だけに終わらず、長州藩士だけでも、寺島忠三郎、入江九一、来島又兵衛、真木和泉守など、貴重な人材を失うこととなったのだ。