SHORT

□光と陰
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延々と、自分の意見をお構いなしに言い続ける彼を見ていると、

鳴々、本当に彼は私の『陰』なのだと手に取るように分かった。





自分の事だから敏感に感じ取れるのでしょう。


直ぐに彼の、大日本帝国の言っている意味が分かった。


浅羽か…つまりは私達の上司が、「大日本帝国は日本の身代わり人形の様なものだ。」という風に言い放ったからでしょう。



「……つまり、貴方は優しくて平和を求める『日本』、私は冷酷で戦を好んでいる『大日本帝国』なのです。」

「……私は、優しくなどありません」

「ふふ、昔の貴方と比べたら、随分と角が丸くなったようですが?」

「確かに昔と比べるとそうでしょう。しかし私は私の勝手な考えでそうなっただけです。
日清戦争や日露戦争の時、誰もが私が勝つなんて有り得ない、と言われましたが事実上は勝ちました。…その後の体力・精神はボロボロでしたがね。
『兄と弟』という親しんだ関係にあった王さんとは心の内で悩みながら戦い、遂に独立しました。露西亜さんとも、私の一方的な考えで戦い、勝ちました。」

「……別人格の私が言うのもなんですが、貴方は本当に、傍から見ればとても心が優しい國ですよ。」



何故。

何故彼は私と違ってそんなにもきっぱりと言いきれてしまうのでしょうか。


彼は私は『光』で彼は『陰』だと言うのに、何故彼の方がこんなにも優れている様に思えてくるのでしょうか。



「貴方が先程言われた通り、此処でなら「大日本帝国」は「日本」として過ごすことが可能ですから、貴方にとっては此方の方が『光』だと思いたいというのも頷けますし、私よりも貴方の方が『一つの国』としての使命感や責任感がとても大きいと思います。」

「そんな情けの言葉等、要りませんよ。私は所詮、貴方の『陰』。別人格で、『身代わり人形』でしかないのです」



そんな悲しい顔をして言う大日本帝国を、私は見つめる事しか出来ませんでした。


だって『光』と『陰』は交える事がない哀れな、運命違う存在なのだから。


 
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