SHORT

□光と陰
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時は…年。



凩の寒さも消え、やっと春らしい季節になってきた頃。





昼時、私は近所を散歩していました。


散歩と言っても、ちょっとその辺をうろうろしているだけですが。





その日は分かれ道でいつもとは違う、右の道を通ったのです。

その時の私は余程暇だったのでしょう、たまには知らない道を通ると言うのもいいだろうと、安易な考えでその方に行きました。


すると、私そっくりな人が擦れ違う寸前で刀を私に向かって投げてきました。



私は昔の勘でなんとかそれを受け止めて振り向くと、私そっくりな人が微笑んでいました。



「やはり、貴方はまだヘタれてはいないんですね……良かった。」

「誰、でしょうか……」

「ふふ、忘れたんですか、『大日本帝国』です。」

「大日本、帝国!?…何故、貴方は此処にいるのですか?」

「おや、てっきり知っていて此方へ来られたのかと思っていましたが違った様ですね。
此処はね、『陰』の世界です。そして貴方が慣れ親しんできた世界は『光』です。」

「何を馬鹿な事を…」

「私はただ、事実を言ったまでです。所詮私は貴方の負を背負う為に貴方が生み出した、いわば別人格の存在。
此処でなら、私は「日本」として過ごすことが可能ですから、私にとっては此方の方が『光』だと、思いたいのですがね。
しかし、中々如何して、そのような浅羽かな考えは何処へ行っても一筋縄ではいかないようでして。」


 
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