SHORT
□お慕いしております
2ページ/3ページ
敗戦国なんかに用は無い。そういうことだ。
「菊さん!菊さん!」
叫んでも叫んでも彼は振り向かずに歩いていく。
私を放って行ってしまった。
今まで会った人の中で、間違いなく彼が一番優しかったと思うの。貴方に護られていたあの時が、人生で一番幸せだったのよ。
「菊さん…。」
ねぇ、お慕いしています。
お慕いしてるんです。
好き、凄く大好きなの。
だから何も言わないでお別れなんてバッドエンドは嫌なの。
せめて嫌いでもいいから何かお別れの言葉でも言ってよ。
「私だけは貴方を見捨てたりしないし、ましてや嫌ったりなんかするものですか。」
「でも私は貴女が嫌いです。」
「はい、知ってます。用済みだし使えないって言うのも。」
それでも私は想い続ける。
「お慕いしています」、と。