SHORT

□諦めればいいのに
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あいつの事なんて、もう諦めてしまえばいいのに。



 『あいつが…っアルフレッドが…』
 『俺から、独立…した。』

 『…ん、そうか…。』


あの時のアーサーは酷く潔く言っていたと思う。

アルを弟の様に見ていて、ずっと世話をしてきたっていうのにいきなり敵になって、しかも独立なんてされたら相当悲しい筈なのに。


 『別に…もうどうでもいいさ。』
 『あいつは俺から巣立っていって、俺はそれを見てた。それだけだ。』
 『一人でもやっていけるなら、俺はアルフレッドを責めたりしない。』

 『それはとても良い回答だな。』
 『…親は寂しくなるのに我慢する道を選んだんだな。』


俺は一応適切な応え方をした。



でも、正直言うと、当時の俺は安易な考えしか出来ていなかった。

アルが独立すると、アーサーのアルに対する依存が酷く大きくなっていたようだ。




アーサーの心はアルフレッドが独立していった直後から、どろどろとしている黒い靄の様なものに支配されてしまったようで、すっかり為すがままにしていたらしい。


「フランシス、またあの日が来る…っ!」

「ああ、分かってる。お前は自分の体調管理ちゃんとしなさい。ほら、これ食うか?」

「でも…俺今食べたくないんだよ…」

「今そんな事言ってたらもう全然体が持たないぞ!?」

「…でも、食べられないんだ。」

「………」

「悪い、フランシス…」


毎年あの日が来る一週間くらい前から家に塞込んでいるし、更にあの日に雨が降ってきちまったら一人で抱え込んでいたものを一気に吐き出す様に涙を流し続ける。


年に一度それをして、またやってと何度も繰り返す。






すっかり体も慣れてしまったらしく、一週間くらいなら食べなくていいとアーサーは思ってしまっていた。


 
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