SHORT

□花鳥諷詠
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月は静かに私を見ている。
静かに…静かに…ただ見ているだけでも別にと思った。

それで十分私の心に何かが伝わっていく気がしたから。


「あの人が居なくなって…もう何十年経ったのでしょうか…」


愛しいあの人は消えた。
私の目の前から忽然と消え去った。


「何時までも一緒だなんて…ウソツキ。」


涙が出てきたが、この際どうでもよい。
涙が枯れても構わない。
私の価値なんてそんなものだと理解してしまったからもうどうでもいいのだ。


「…もう休みましょう。」


布団を敷いて潜った。



 
でも、どれだけ寝ようと思っても無理だった。





ひょっとしたらあの人が突然目の前に現れて「ただいま」なんて元気に笑ってくれるんじゃないか。


昔の様に抱きしめてくれるんじゃないかと淡い期待をしてしまう。







それは余りにも身勝手な、一生かかってもかなわないささやかな願い。


 
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