LONG
□絶対的な、誓いが欲しい
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「菊、入って良いよ?」
「え、ああはい。」
アーサーと菊とがすれ違う最中に少し目を合わせた。
菊がほんの少しながら嫉妬の意を込めて睨むと、アーサーはそれを察したのか、にやりと笑い、ドアに手をかけ、フランシスにこう言った。
「あんまり奥さんに嫉妬させんなよ、旦那さん?」
「ばっ…!旦那なわけないでしょーが!!」
顔を赤らめながら思わず大声を上げるフランシスに、アーサーはなおもにやつく。
菊に耳打ちして、「まぁ頑張れよ」と言って肩を軽く叩き、長い廊下を駆けていった。
「……あーっと、菊、入っていいよ?」
「あ、はい。」
呆然としている菊にフランシスがそう話しかけると、菊ははっとして、素早く部屋に入る。
フランシスがドアを閉めた。
「……」
「……」
沈黙が続く。
気まずい、そう思った菊が取り敢えず「あの、」と声をかける。
「ん?」
「ええと……あっさっきまで、何の話をしていたんですか?」
なるべく笑みを浮かべて問う菊に、フランシスは少し答えるのを躊躇した。
「(恋愛話してたなんて言えないしな〜…)まぁ、色々と、ね。」
「へぇ……色々、ですか」
「う、うん。そうだけど、何で?」
フランシスがそう聞くと、菊は俯いた。
フランシスはちらりと見えた菊の耳が、赤い事に気づく。
「(あれ、俺なんか怒らせる様な事、聞いちゃった!?)ご、ごめん。別に菊が嫌なら、理由なんて言わなくていいよ?」
「……申し訳、ありません。」
菊は溜息をついて、「あの、すみませんが席についても?」と聞く。
「あ、ああ。」
「あ、フランシスさんも座って下さいな」
「え、うん……」
言われるがままに、フランシスは菊の向かいの椅子に座った。
菊は少し考える素振りを見せる。
フランシスは一体どうしたんだろうと思いつつ、また先ほどの様に彼を怒らせるような事をしたくないな、という結論になって、大人しくする。
「理由。やはり、話す事に致します。」
「え……?」