二周年企画

□アウトコースな彼女
1ページ/6ページ




「あれ…木々と話してるの誰だ?」


ゼンはちょうど、所要の外出から戻ったところだった。側近の片割れと、そこに話し掛けている少女の姿に足を止める。
側にいたミツヒデがそれに答えた。


「ああ、うちの新人兵士だよ。最近木々に懐いてるみたいでよく話掛けられるって言ってたな」


ゼンはミツヒデの言葉に相槌を打ちながら、少し不思議そうに眉根を寄せる。


「へえ。だが、木々はあれ嫌そうにしてないか?」
「あぁーそうなんだよ…」


ミツヒデは困ったように肩を下げた。




夢子は木々の姿を見つけるなり、駆け寄って最敬礼で挨拶をする。
それはもう日課のようになっていて、木々を察知するセンサーは城一番であると思っていた。
しかし当の木々はいつも呆れたような、辟易したような様子で短く返すだけだ。


「木々さんっお疲れ様です!」
「…お疲れ様」


夢子はそれには気にした風もなく、変わらず嬉しそうに木々の後を追う。


「あのっ今度また手合わせ願えませんか!」
「そういうのは上役の教育係がいるでしょ」
「私は木々さんにお相手していただきたいんです!」
「今は忙しいからまたね」
「あっ木々さんー!…私っ、諦めませんからねー!」


大声で手を振る夢子を後ろに、木々は歩調を緩めない。それから少し歩いて主人らに気付くと気まずそうに顔を歪めた。
何も言うつもりはなかったのだが、ミツヒデがすかさずに話を振った。


「なー木々ー、あの子お前に憧れてるんだろ?もうちょっと相手をしてやったらどうだ?」
「…甘やかすのがいいことだとは思わない。ここでは自分の力だけでやっていく気概のない人間はいらないよ」
「厳っしいなー」
「何とでも」


正論ではあるが、これでは身も蓋もない。頑なな態度は意地を張っているようにも見えた。



それから数日後、その日夢子が声を掛けたのは、ミツヒデだった。
修練場で汗を流していたミツヒデはおずおずと近寄ってくる人の気配に顔を上げる。


「ミツヒデさん!おはようございます!稽古中に失礼しますっ今よろしいでしょうか!」
「ん?ああ君は確か、夢子?」
「はい!覚えててくださったんですね!」


ミツヒデは曖昧に笑って返した。それはまあ、あれだけ毎日来られれば忘れないだろうと思う。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ