二周年企画
□双生フィラメント
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「ただいまー」
「来た来たお帰りー」
夢子が来てから半刻ほど経ったころ、野上家の玄関が騒がしく開かれた。
「おーすげぇやっぱ広いなー」
「神社は昼からでいいよね」
「おー」
とりあえずは荷物を置こうと四人は板張りの廊下を進んだ。部屋に入れば、暖かい空気が四人を包む。
先に奥へ進んだ伊勢崎が途中床に目をやって、開きかけた口に言葉を詰まらせる。
「……あれ?野上、って…妹いるんだっけ?」
「はぁ?妹?」
野上が覗くと、夢子が鼻まですっぽりこたつに埋まって転がっている。穏やかな寝息に合わせて掛け布団が上下していた。
「夢子…」
気持ちよさそうに眠る幼なじみに脱力してその肩を揺らす。
「夢子、夢子っ」
「あ、草ちゃん……おかえりー」
ぼんやりとした瞳は、いまだ開いたり閉じたりして野上を捉えているのかも定かでない。
「ただいま。じゃなくて何してんの」
「んー…草ちゃんを待ってたんだよ。おばちゃんがそうしたらって…」
夢子はこたつの中で小さく伸びをすると、ゆっくりとした動作で身体を起こした。
そしてそこで初めて、自分達二人以外の存在に気付く。
「あ、…あれ?っ、こんにちは…!」
「どーも、えっと、お邪魔してます?」
伊勢崎達も当惑しながら答えると、気まずそうに野上に視線を投げかける。
「あー、あの、草ちゃんのお友達?」
「そー。高校のやつら」
野上の答えを聞き、夢子は慌てて姿勢を正し、寝起きの上気した頬を抑えて伊勢崎らに向き直った。
「初めまして。変なところ見せちゃってすみません」
「あーいや、えーっと…妹、じゃないんだよな?」
上村はくるりと首を回して野上を見た。野上はいつの間にか一人こたつに埋もれて背中を丸めている。