書物庫

□俸禄は貴方のために使います。
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晴天のある日、男二人が乗った馬がゆっくり歩いている。
騎乗しているのは真田幸村と幸村に包まれるように前には石田三成。
肌寒くなる秋半ばだが、密着する二人は冷えを感じない。
特に幸村は――体が熱い位だ。
頬は火照り、心臓がうるさい。
慕う相手と密着してれば当り前だ。
豊臣の世を守るための徳川家康との天下分け目の関ケ原の合戦。
まさかの味方寝返りで三成率いる西軍は壊滅状態になった。しかし、突如駆けつけた幸村のおかげで戦況は好転し、三成は戦に勝った。
三成はそのお礼に幸村と二人っきりで出かけると、約束した。
今日が約束の日。
二人は忙しいので遠出は出来ない。
三成は近江の政務をしなければいけない、
何より今は金がない。
関ケ原の大戦で全財産使ってしまったからだ。その事は三成以外には左近と父と兄しか知らない。
今、三成は居城・佐和山城付近にある茶屋で日々働いている。最初は一人で奉公に出ようと思ったが、芋づる式に幸村も同じ所で働き、か会津ら直江兼続も駆けつけていた。
「兼続殿に悪い事しましたね……」
茶屋の店員は店主、三成、幸村、兼続の四人だ。内二人が今、外に出ていることになる。
三成達が来るまでは普通の茶屋だったが、今や有名武将が三人も働く茶屋になったおかげで客足が止まらない。毎日大忙しだ。
「兼続なら大丈夫だろう、あいつは器用なやつだ」
さらっと言う三成に幸村は苦笑い。
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