ろばまる☆たんぺん

□キライって言わないで
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「うーえーだ」




雑誌の撮影、その待ち時間


携帯弄りに没頭してる、きみの名前を呼んだ。


ディスプレイを見つめてた大きな眼が

ちらりと俺を映して


それだけなのに、

いちいち跳び跳ねる心臓が、いつも厄介なんだよね。



カメラが回ってたって、その瞬間

俺の笑顔は、多分

引きつってるはずで

きみにドキドキしてるコトを隠したくて、

不自然な笑顔を浮かべながら、気のないフリで頑張ってみてんだ、いつも。




「わぁ、今日も鼻が目立ってますね、中丸さん」


「うん、存在感ばっちりー…って、コラー!」


にひひ、と悪戯な笑顔で俺をからかう

そんなきみが好きなんです、が。



バリバリ女の子大好きな上田くんに

口が裂けても


「好き」なんて言えない。







「あのさ、上田。こっちのTシャツと、このTシャツ…お前なら、どっち好き?」


雑誌を目の前に突き出されたきみは

一瞬、呆気にとられた顔をして


「なんか珍しー、中丸がファッション誌読んでるなんて」


チラチラ俺と誌面のTシャツを見比べてる。


その、俺を見る時

上目遣いになっちゃうのが…とんでもなく可愛い。



「んー、こっち」



ぴっ、と指を差す。

ああー、違う、違うんだって…

もうちょいね、足りないんですよ。





「上田はこっちのが…」


「ん、好き」




ふっくら綺麗な唇から

零れた二文字。


笑顔できみが言った、その言葉に

心臓が止まりそうです。



…言わせたの、自分だけど。




「あ、じゃあ、…このブレスとこっちなら…」


「えー、こっち?」


「何で?」


「デザインが好き」


「なぁ、これ上田好みの色じゃない?」


「あー、うん。そっちも好き」


「これ、上田に似合いそう」


「そーゆうの、結構好きかも」








このまま、この「好き」が


俺に辿り着けばいいのに…







「ね、中丸はどーゆうの好き?」


「…え」


「んーっと、アレとソレとアッチとコッチと…コレ」





順番にきみが指を差していったのは


楽屋で好き勝手に寛いでるメンバー。




亀と赤西と田口と聖


そして、きみ自身。








「どれが…好き?」




その、好きはどんな意味?




「え、そりゃ…みんな好き…だよ」



鼻の頭を掻きつつ答えた俺は、ネクタイをぐっ、と引っ張られて

きみと一気に至近距離。


ほんの少し首を傾げて

俺にしか聞こえないくらいの、小さな質問を囁く唇に


駄目だと分かってんのに、視線が奪われちゃって。





「…俺もみんなと同じ、好き?」






───そんなワケないよ。



何倍も、何十倍も


自分でも比べられないほど




…好きだよ。





「うん、上田のことも好きだよ」




みんなと同じ気持ちなんかじゃ、ないんだ…


隠すのって、疲れるね。





「俺は、中丸キライ」





そっか…キライか…








「って、な、なんで!?」


「だって中丸、俺のこと好きじゃないから」


「そんなことないって!好きだよ」



何でこんなに必死になってんだろ、俺は。


きみから欲しいのは、キライじゃなくて…






「上田…、あの…耳貸して」





周りには、アレやコレが居るから

俺のネクタイを握ったままのきみに、そっと耳打ち。










「──…嘘ついてました。俺は…





───コレが、一番好きです」







だから、キライって



言わないで?







「…俺も、コレが一番…大好き」





ぐるぐる遠回り



好き、がやっと辿り着いた







end
 

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