Long Story

□【密約】(3)
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重なるように俺の腕に抱かれ、うっとりと目を閉じている中佐の頭を撫でる。しっとりと汗を含んだ髪はシルクみたいな手触りで、するすると落ちながら俺の指の間をくすぐっていった。
灯りをつけたままで煌々と明るい、しかも居間のソファでのSEX。今までは、どんなに盛り上がってても、こんなこと絶対許さなかったひとだ。

そして。
なんの用意もないままに、抱き合ったために、中佐の身体の中にたっぷりと注ぎ込んでしまった欲望の証。そんなことするのも初めてで。

交歓の余韻にひたっていた俺は、そこまで思って、突然ちょっとあせった。
やべ。ちゃんと後始末しないと! こういうの…ちゃんとしとかないと、腹壊すって聞いたことある。
やおら身を起こしかけた俺を、中佐の腕が絡んで止めた。

「…どこに行く?」
「あ…の、風呂の用意、してこようかと」
「行くな。もう少し、このままでいろ」
「…でも、」

言いよどんだ俺に、もう一度「行くな」と命令する中佐に困惑しながらも「はい」と答えれば、中佐は満足そうにうなずいてまた目を閉じた。眠いのかと様子をうかがう俺の耳に響く、囁く音量のテナー。

「…なぁ。こうやって話をしてたら、おまえが嘘を吐いてもすぐ見抜けると思わないか?」

中佐は胸にぴったりと耳をつけて、俺の鼓動を聞いていたらしい。俺の視線に気づいて、イタズラっぽく笑ったその顔は、若いというのを通り越していっそ幼いほどで。俺は中佐の背中にまわした腕に力を込める。

「見抜くもなにも…俺、中佐に嘘なんか吐きませんもん」
「そうか? じゃあ、試すから何か話してみろ」
「えー? 何か、って急に言われても困ります」

俺は苦笑いしながら、中佐の額にちゅっと音を立ててキスした。

言いたくて言えないことはたくさんあったけど、嘘をついたことはない。これは事実だ。

困っている俺を中佐が面白そうに観察している。俺の鼓動が速くなる。ねー、嘘なんかつかなくても、あんたが可愛くて俺の心臓はずっと鳴りっぱなしなんだけど?
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