Long Story
□【陥落】
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中佐のマース・ヒューズ少佐を見る視線の意味には、ずっと前から気付いていた。
そして、それに応えるヒューズ少佐の視線の意味にも。
親友? 戦友?
そんな関係じゃあんな絡まるような視線は交わさないだろ?
俺にはわかった。
なぜなら、同じ意味の視線を俺自身が中佐に向けていたからだ。
つまり…軍内でも“ふたりは出来ている”なんて噂があったけど…実際そうなんだろうな、ってこと。
俺は中佐が好きだったけど…なんていうか…この恋についてはかなりあきらめがはいってた。
なんていったって、相手がヒューズ少佐じゃ分が悪すぎる。
正直、階級だけでなく、男として人間として何ひとつ敵わない気がしてたから。
「ヒューズ少佐ならいいか」ってのは負け犬の論理かもしれないけど、一応納得は出来てた。
俺は中佐のそばにいて、あのひとの背中を守れればそれでいいや、なんていじらしい覚悟まで決めて。
でもそんな考えがふっとんだ。
――あの日、あのとき。