Long Story

□砂の記憶
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ロイは3日前から療養中だった。

手榴弾による攻撃。
かろうじて直撃は免れたものの、避ける際の着地に失敗し、左足の甲を骨折した。

怪我をする直前、ロイは子どもを殺していた。錬金術の暴走だった。

自らの焔に焼かれて死んでいく子どもを目の当たりにし、動揺した瞬間を敵に狙われたのだ。

イシュヴァールの前線に配備されて半年。

軍人となったときに相応の覚悟をした。これまでにもたくさんの人を殺してきた。

それなのに何故、一瞬の油断が即、死につながる局面で、あんなにも動揺してしまったのか。

それは――グラスに注がれた水が溢れるようなものだったのかもしれない。
突然ロイの中の何かが一杯になってしまい、許容量を超えてしまったのだ。

同時に、揺るがないはずの信念が一瞬とは言えぐらりと傾き、その事実が折れた足よりも鈍い痛みとなってロイを苦しめていた。
ロイに与えられた休養期間は5日間。

出世第一のロイに焦る気持ちがないと言えば嘘になる。

しかし、一度折れたこころをしっかりと立て直すためには時間が必要なこともまた、わかっていた。
そのための休暇だ、とロイは自分に言い聞かす。
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