Long Story
□【陥落】
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「なんで言わないんだよ?」
部下のくせに、年下のくせに……俺はあえて生意気な口調でそう言った。
俺の上司――ロイ・マスタング中佐は動じない。執務机に座ったまま、黙々と書類に目を通している。
そのすました態度に腹がたって、俺――ジャン・ハボックは、ちょっと語気を強めてもう一回言った。
「なんでヒューズ少佐にあんたの気持ち伝えないんだよ!?」
中佐がようやく書類から目を離した。
組んだ指の隙間から上目遣いににらんでくる。ぞくっとするほど怖い顔。
「おまえには関係のないことだ」
冷たい拒絶の言葉に、俺はぐっと言葉を詰まらせた。
人差し指が俺の後方の扉を指して「出て行け」のジェスチャー。
悔しいけれど、上官の命令には従わざるを得なくて。
口の中でもごもごと「失礼します」と言いつつ、俺は中佐の部屋を後にした。