短い夢

□嘘に嘘を重ねて
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「別れましょう、」

ぽつりとアレンから吐き出された言葉に私は思った。あぁ、やっぱりね。と、それから、まだ別れたくない。ずっと俯いていた顔を上げて、アレンの表情を見てみる。…無表情だった。

「…理由は?」

別れたくなくて、納得出来なくて。だから、無駄な足掻きだと分かっていても、足掻いてしまう。理由は?なんて白々しいわ。だって、知っているの。貴方が見ていたのは、何時だって私の隣にいるリナリーだった。私がアレンを見る視線と同じ視線。嫉妬嫉妬嫉妬。なんて妬ましいのだろう。けれど言えなかった。だって、私の気持ちはきっと届かないから。

「…他に、好きな人が出来ました…。」

馬鹿ねぇ、教団にはリナリーしか女の子いないじゃない。あえて名前を言わない貴方が大嫌いで、大好き。だからね、ばいばい。アレン。幸せに、なって。

「そっか…。」

「…すみません。」

「最低。大っ嫌いっ!」

バチン、

アレンの頬をおもいっきり叩く。ごめんね、痛いよね。けど、…けどね?貴方の為だから、こんな苦い嘘を吐いた。貴方の為だから、頬を叩いた。本当に、これでアレンに触れるのは最後だから。

―――こんな形でしか応援出来ない私をどうか、忘れて。…さよなら、ありがとう。愛してる、

叩かれた頬を手で押さえたままなアレンに背を向けて言った。

「ありがとう。…ばいばい。」

声が震えた。手も震えた。足も震えた。小さく、すみません。と呟いた貴方を抱き締めたくなった。今のは全て嘘なの。…言いたかった。…でも、

――振り返らなかった。

私は身を引くべきだから。思いは届かない。
今度会うときは、お互い何の関係もない。

走る、走る、走る。
涙がでる。嗚咽が止まらない。

やっと止まった。
小さく振り返ってみた。
君は、いなかった。








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