繋がるブック1
□…どーぞ、俺でよければ
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「…ん、矢野だ」
黒沼と友達になった日の夜、試験勉強の疲れからか、眠ってしまった
手元にあった携帯が着信を伝えていて、開くと書いてあった名前はあまり見慣れない名前
「…どうしたの?」
【名無し、暇?】
「俺は別に大丈夫だけど、」
【じゃあさ、土手来てよ】
ブチっと、一方的に電話が切れて後に残ったのはツーツーと虚しい音だけ
「どーしたの?いきなり」
結局来てしまった俺は最近かなり丸くなっていると思う
「…今日さぁ、貞子に好きじゃないって言われた」
「…うん」
「なんだかなぁ、」
「ショックだった?」
「……うん」
来てみたのは良いものの、そこにいたのはらしくもなく落ちている矢野で
ぽつりぽつり、と話し出す言葉のひとつひとつを聞き逃さないように必死に聞いた
言葉を詰まらせる矢野にひとつ、尋ねると少し間をあけて頷き、上を向いて名無し、と読んだ
「あ?」
「肩、貸してくんない?」
「…どーぞ、俺でよければ」
ノートを貸したときと同じ調子で答えて、矢野の腕を引く
服の裾を掴み、大した抵抗もしないあたり、本当に弱ってるんだなぁ、と内心苦笑した
誰よりも傷つきやすくて、
(俺に弱み見せちゃっていーの?)(…知らない)(ははっ、知らないよ?)(うっさい)
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