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□君が望んだ光はとても儚い
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まだ寒さがきびしい頃のお話。

突き刺さるような寒さに思わず顔をマフラーに埋める。首に見える黒いマフラーは意地っ張りでどうしようもないくらい好きな彼女からのプレゼントだ。
朝降っていた雪は頼りない太陽によってきらきらと光って溶け始めていた。


「さっみ…」


返事はもちろん返ってくるはずはなく、代わりに返ってきたのは背中にどんと鈍く響いた衝撃。
恐る恐る後ろを振り替えると見える茶色い髪の毛。はあ、と溜め息を吐いて名前を呼ぶと悪戯っ子のような笑みで目の前の幼馴染は笑った。そんな姿を見て苦笑してしまうあたり俺はまだこの幼馴染に甘い。


「今日風早たちと一緒じゃないの?」

「残念。別にいつも一緒に帰ってるわけじゃないよ」
「ふーん…ねえ名無し、土曜日ひま?」

「土曜は……ちょっと出かけるから無理、かな」


なんとなく矢野と出かけるって言うのが照れ臭くて。それにきっとそんなこと言ったらくるみはニヤニヤとした顔で弄り倒してくるだろう。
俺は生憎そんなシュミはない。


「……そっか」

「なに?なんか用事?」

「んー…最近構ってくれないから遊びたいなーみたいな」

「…くるみが、矢野が妬くからあんまり一緒にいない方がいいって言ったんだろ」

「…だって」


口を尖らして拗ねたような顔をするくるみに心底溜め息を吐く。こんなことしたって、俺はどうしたってくるみに甘い。地面に顔を向ける頭をぽんぽんと叩く。俺が苛めてるみたいじゃないか。そんなことしたらくるみの密かなファン達に何をされるか。考えるだけでぞっとした。


「……土曜は無理だけど、」

「?」

「日曜は暇だよ。それに俺こないだ新しいゲーム買った」

「名無し、」

「なかなか進まねーの。手伝ってくれる?」


そう言うと満面の笑みで頷いた。

どうせなら外で遊ぼうよ雪合戦!ヤダ、さみーじゃん。えー太るよ。うるせー、翔太みたいなこと言うんじゃないの。え、風早そんなこと言ってたの?もしかして以心伝心かな?知らね。あっなにそれ酷いなー。ほら、また降りそうだから帰るぞ。はーい。

すっかりご機嫌なくるみは俺より少し先を歩いていく。
今日の夕ご飯はなんだろう。きっと別れ際にくるみは俺を無理やり引っ張って家へ引きずり込むだろう。そして胡桃沢家にはほかほかのご飯が俺の分も出来ていてよく知っている人たちが俺を迎えてくれる。その後は勝手にうちの両親がおかずを持って乗り込んでくる。




「名無し、ご飯今日うちに食べに来るでしょ?」

「…ふっ、」

「なに?」

「んー?ナイショ」


想像していたことをくるみが話し始めて、思わず笑みがこぼれる。まだまだ翔太より俺のほうが以心伝心してるな。
ふふ、と含み笑いをしていると不思議そうに、そして怪訝そうな顔で覗かれる。

そんな幼馴染を見て、たまには外で雪合戦もいいかなと思った。












君が望んだ光はとても儚い











お題配布元:恋するブルーバード




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