魔法

□04
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なんで私がコートを貸してくれた人にこんなに執着するのか。
別に執着をしているかと言われたらそうでもないのかもしれない。
でも、なんだか引っかかっているのも事実。


結局のところ、よくわからない。





04




そろり、とあくまで静かに。まだ生徒が寝る時間ではないけれど、寝るギリギリの時間。
こんな時間に談話室に人がいることは滅多にない。
逢引きぐらいのもの。それかとんだ物好きだけ。

だけどどうやら、そんな物好きはいたらしい。


「シリウス?」

「んあ?まだ起きてんのか、お前」

「え、うん。まぁ……」


曖昧な返事を名無しがすると、シリウスはジッと探るような目で見つめてくる。
目を逸らしたら負けなような気がして
名無しも対抗するかのように見つめ返す。


「……ぶっ」

「んなっ!?」

「眉間にしわ寄ってんぞ」

「だってシリウスがっ」

「わーかったから、ちょっと落ち着け」

「……はい」


結局負けた気分の名無しは大人しくシリウスの隣へ座る。
あれだよな、やっぱ美形ってズルイや。何やってもさまになっててうらやましいっつの。
シリウスのせいでも何のせいでもないけどそんな恨みをシリウスの足にぶつけてやった。


「ってぇ!こんの……!」

「やー!やめろー!イケメンだからって何しても許されると思うなばかー!」

「はぁ!?なんだそれ」

「いや?なんていうか……八つ当たり?」

「てっめ……」

「ぎゃー!近寄んなー!」


羽交い絞めにされた名無しはドタバタと暴れる。それを気にせずにシリウスは名無しの頬を押さえる。


「いはい!いはい!」

「あー?何言ってるかわかりませーん」

「ひょの……!!」

「悔しかったらやり返し」


てみろ、と続けるはずのシリウスの言葉はどこかに消えていて、その代わりにシリウスの視線はドアの方へと向いていた。


「…何やってるの?」

「っとお!」

「あっ、」

「リーマスだ」

「……何やってるの?シリウス?」

「いや、えっと…」

「あれ?知り合い?」

「ムーニー、これはだな」

「…………ん?」


衝撃的な一言を名無しは危うく聞き流すところだった。
ムーニー、そうだ。ムーニーだった!
え?ムーニー?

シリウスは確かに名無しの知っているリーマスの方を向いてムーニーと言った。


「うおえええええええええええ!?」





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