I.cブック
□トワイライトの空によろしく
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沖縄の空気は思っていたよりも暑くなくて。今はなんだかそんな空気が心地よかった。
ケントは既に支度を済ませてロビーに女子達と向かっていた。のろのろとシャツを脱ぐ俺をさりげなく待っていてくれるツルに感謝して2人でロビーへ向かう。あちーだとか今日飯何時だっけだとかくだらない話をしているとちょいちょい、とジョーに手招きをされた
「ん?」
「見てこれ名無し!」
「うおー…ハブか…」
「やっばいねこれ!」
「ジョー買うの?」
「買わねーよ!?」
ゲラゲラと笑うジョーと吉田を一歩後ろからツルと見つめる。…吉田は本当に女なのかと時々不安になる。等の本人を半目(ツルに哀れなものを見る目って言われた)で見つめているとポケットに突っ込んでいた手を控えめに引っ張られて
どきり
微かに高鳴った心臓にありえない、と内心苦笑い
おずおずと首だけ向けるとそこには1人の女子が立っていた。ショートパンツにシャツ一枚の姿がなんだか寒そうに見えた
「…?」
「ちょっと…いい?」
「あー…」
こういうのはなしがよかったなあなんて言ったらジョーに怒られるけど。そういう気分ではなかった。
引っ張られた手は離されずに、目の前の女子は口を開く
あ、なんかすげー嫌な予感
「名無しくんが好きです」
「……」
ぐさぐさと刺さる視線(主にジョーと吉田)に今すぐこの場から逃げ出したい。全力で。だけどそんな訳にもいかず、人通りが少ない廊下へ元凶を連れ出した
「ごめんね、あんな所で」
「いや、いーよ別に。うん」
「だけど本当に名無しくんの事好きなの」
「……」
俺は果たして彼女に惚れてもらえるような何かをしたのか。したならマジでふざけんな俺。今の俺に謝れ俺。
「おかえりー!どうだった??」
「どうだったも何も…断ったけど」
「はあ!?!?なんでだよ!!!!」
キラキラとしたジョーの顔は一瞬で憎々しいものを見るような目に変わり、ガクガクと俺の肩を揺らす
酔いそうな揺れに頭を鷲掴みにして遠ざけ、被害が拡大する前にケントとツルの元へ向かった
「断ったんだな」
「あれ、聞こえてた?」
「いや、心なしかテンションが低いだろ」
「気持ちいいもんではないよな。断るのって」
だったら付き合えばよかったじゃん。口ではそういいながら飲みかけのペットボトルを渡される。名無しが気にする事じゃないだろと、ツルが笑った
その後ろからにょきりと出てきた金髪は目を合わせるなり
「泣いた女の子の事は任せなさい」
「おー」
ふふん、ケントの得意気に胸を張る姿に2人で笑い出す。頼んだ、と言えばケントは嬉しそうにへにゃりと笑った。次第にケントを囲む女子が集まってきて
窓から見た月は気持ちいいくらいに綺麗だった
トワイライトの空によろしく
お題配布サイト様:たとえば僕が
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