I.cブック

□君も知らない弱いとこ
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―名無しにはもうあやねちゃんいるでしょ。私とあんまり一緒にいるとヤキモチ妬かれちゃうよ


「って」

「んなわけあるか」

「え、妬いてくれないの」

「アンタねー…くるみにいちいち妬いてたらキリないっつの」

「まぁ、いいんだけどさ」


翔太黒沼の一件から数週間
身近な人たちにはお付き合いをしていることを告げて
あいつらには右手のことも告げて、

俺の野球人生はおしまい


「でも心配よねくるみ」

「なー。でも矢野もくるみのこと慰めてくれたんでしょ?」

「あー…まぁ、うん」


体育祭のときのようにくるみは俺の前でまで泣いてくれなくなった
多分それは俺と矢野を気づかってくれたんだと思う、けど


「…もう、」

「あ?」

「野球しない、んでしょ」


なんだか自分のことのようにしょぼんとしてくれる矢野が可愛くて思わず口元が緩んでしまう


「もうしないよ、多分。だからあの姿…忘れんな」

「ん。かっこよかった」

「…」

「照れてる照れてる」

「〜っ」


思わず赤くなった顔を机に伏せ、向かい合った上にある矢野の顔を目だけ出して見る


「その顔、かわいい」

「かわいいとか言われても嬉しくない」

「知ってる。でもかわいい」

「矢野のこーゆーとこやだ」

「それでも好きなくせに」

「わりーか」


ずりずりと下がってきて同じ高さになる視線
誰も教室入ってくんなよ
ジョーとか来たらブっ飛ばす


「あたしアンタがこんなに純粋だと思わなかった」

「純粋じゃないよ。押しに弱いだけ」

「いーこと聞いた」

「俺の矢野の弱点知ってるから別にいーもん」

「なにそれ?」

「フフフ…」


近くにある顔から少しずれて、ピアスが付いている耳へ口を近づける

耳元弱くて、俺に頭撫でられるの好き、






君も知らない弱いとこ

(っ!狙ったでしょ!)(やられっぱなしは性に合わないって言ったでしょ)(っあー!耳元で喋んな!)




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