BL小説
□二と治
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「乾ってさ、英二だけたまに名前で呼ぶよね」
練習が終わり、部室でそう不二に言われて自分ではそれなりに上手く隠していたつもりだったから驚いた。
「そうかな?みんなが英二って呼ぶからね」
「タカさんだって河村だし、桃だって桃城って呼んでたんじゃないかな」
「仲が良いんだ」
「確かに3年間の付き合いだけど、僕にはそれなら手塚とか、海堂のほうが仲良く見えるけど」
「名前のほうが菊丸って呼ぶより短いだろ」
「海堂や桃も名前のほうが短いし、タカさんだって名前のほうが短いんじゃない?」
「短くする事に意味があるならみんなだって河村をタカさんと4字から4字に直す必要は無いんじゃないか?」
「…ふーん。僕の気のせいかな。ごめんね、あまり理由なんか特に無いよね。少し気になっただけなんだ、じゃ、また明日」
少し長めのさらりとした髪を靡かせて不二が出て行った。
菊丸をたまに英二と呼ぶようになったのは確かに周りが呼ぶようになってからだ。嘘は言っていない。ただ、中学に上がって半年くらい過ぎ、みんなに便乗して
「英二」
と呼んでみた。
eiji
renji
どことなくどころかなかなか似ていた。
当時、呼んでも届かないお前の名前に。
こうしてテニスをしていればいつか会える。それは確信していたし、実際そうだった。
英二の名前にお前の名前を重ねて少しでも口の筋肉が寂しくならないようにしていたその時の名残だ。